【玄関ドアの前で(右から)福榮さん、柳澤さん、小山さん、萩崎さん=名張市蔵持町芝出で】

 戸建住宅、マンション、オフィスなどの建材や設備機器を生産する株式会社LIXIL(本社・東京都品川区)の中で、玄関や室内ドア、引き戸、窓枠などを担当しているのが同社名張工場(三重県名張市蔵持町芝出)だ。

 今回は、エネルギー効率を追求した商品力と地域との共生を目指す活動、更には生産工程で発生する廃材のリサイクル率100%達成への取り組みを紹介する。これはSDGsの持続可能な開発目標7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)と12(つくる責任つかう責任)に該当する。

 同工場は54年前の1970年に創業し、アルミサッシの生産を始めた。2011年にトステム、INAX、サンウエーブ工業など5社が統合し、新会社LIXILの名張工場としてスタートした。

 現在、同工場の従業員は約500人。「玄関ドア製造課」と室内ドアや引き戸、窓枠を担当する「インテリア製造課」の2部門で、それぞれ多品種少量生産を行っている。

 SDGsの取り組みの1番目は断熱性を追求した商品力だ。玄関ドアの断熱性は脱炭素社会の実現には欠かせないとして、現在国からも補助金が出ているという注目の商品。内部には断熱材として発泡ポリスチレンを詰めているが、同社製は「発泡倍率」と呼ばれる膨張率が20倍と非常に低いのが特徴。

 内部の密度が高いため、夏の冷房時には暑い外気を中に入れず、冬の暖房時には室内の熱気を外に逃さない効果がある。その結果、空調時の電気の使用量を抑えることができるそうだ。

 現在、玄関ドアの生産シェアは国内1位をキープしている。

工場の生産ライン(一部加工しています)

 2番目は、地域との共生への取り組み。7、8年前から名張消防署と連携し、火災発生時にいかに早くドアをこじ開けて室内に入るかの訓練を敷地内で行っている。ガラスを割って進入すると酸素が一気に入って火の勢いが増すし、特にマンションなどはドアからの進入が最優先になる。そこでドアの構造を設計者自ら説明し、実地訓練に生かしているのだ。今年は名張警察署の機動隊員も参加した。

 この他、地元の蔵持小学校での出前授業や名張地区まちづくり協議会主催の「名張学園祭」にも参加し、廃材を使ったトッププレート作りのワークショップなどを開いている。青蓮寺湖駅伝やひなち湖マラソンへの協賛もその一環で、従業員が地域と触れ合う機会を作り、地域の活性化につなげたいとの思いがある。

 3番目は、リサイクル率100%への取り組み。工場から年間、約4000トンの廃材が出るが、これらは松阪市のバイオマス発電所に送り、燃料として再利用している。

 同工場は「バイオマス事業者認定」を取得している。これは、工場で使う木材は全て天然木材を伐採した「認証材」であり、その廃材は他の木材と混ざらないように正しく分別し、バイオマス発電に使われていることの証明になっているそうだ。

 この他、ビニールやプラスチックの廃材は道路を作る時の路盤材として、割れたガラスは屋根や壁の断熱材のグラスウールに再利用されている。

 取材に協力してくれたCRグループグループリーダー小山悠さん(41)、技術科課長柳澤稔さん(42)、技術科萩崎勝洋さん(53)、総務課課長福榮研二さん(45)の4人は「トステム時代から50年以上、この地で創業させて頂き地域に根差した活動をしてきたが、LIXILとしての浸透度はまだまだ低いのが現状。この機会に、ぜひ当社を身近に感じてほしい」と口をそろえた。

2024年12月7日付881号16面から

敷地内にある2か所の太陽光発電施設で、工場の10%の電力を賄っている=同
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