【トレカの仕分け作業の様子】

ネクストワンサポート

 アニメやゲームのキャラクターがプリントされ、収集や交換(トレード)、ゲーム用として国境を越えて流通している「トレーディングカード(トレカ)」。トレカの流通やカード専門店の運営、各種イベント開催などの事業を展開している株式会社ネクスト・ワン(三重県名張市夏見)が、2022年12月、さまざまな要因で生きづらさを抱える人の就労を支援する目的で株式会社ネクストワンサポートを立ち上げ、仕事を楽しむという意味を込めた「ゴトシム」の屋号で活動している。

 これはSDGsの8番目の開発目標「働きがいも経済成長も」で、「障害者を含む全ての男女が人間らしい働きがいのある仕事につく事」に通じる。

 ゴトシムは就労継続支援B型で、一般企業に雇用されることが困難な、障害のある人を対象に就労の場を提供している事業所だ。

 ネクストワンサポートを立ち上げたそもそもの背景には、親会社の高田雅之社長の思いがある。1990年前後から、小中学生を始め、多くの若者が家の中でテレビゲームに熱中したことで、「ひきこもり」を助長させる一つの要因になったのではないか、という自責の念だ。

 一方、トレカは対面形式でコミュニケーションを取りながら遊び、仲間づくりをするアナログ的な方法が魅力。ひきこもりの人を外出させる良い商材になっているそうだが、トレカ事業を担う企業の使命として「ひきこもりで悩む人に社会参画の一歩として働く場を提供することで世の中に貢献したい」という思いに至ったという。

 近鉄名張駅に近い複合コミュニティー施設「ナバリエ」(同市希央台)2階に、ゴトシムの事務所と作業場がある。現在、軽度の知的、精神的、身体的な障害のある25人の利用者が、トレカを色や種類別に仕分けし、梱包して親会社へ出荷している。

 また、アマゾンに出品している業者や、名張市周辺の各企業から受託した商品のシール張りや袋詰めなどの軽作業をし、それぞれ納品している。親会社が企画するeスポーツの運営を手伝うこともある。

 デスクワークが基本で、体力に自信のない人も安心して作業できる。その丁寧な仕事ぶりは、各企業から好評だという。事業所の車で利用者の送迎も行い、日当も支払う。

 スタッフは職業指導員や生活支援者など6人体制。名張市役所で約10年間、障害者福祉を担当したサービス管理責任者の森麻唯さん(34)は「利用者の方はそれぞれに家庭の事情や精神的な悩みもあり、当初は緊張で話せないケースも多い。できるだけリラックスした雰囲気で1日を過ごせ、仕事の達成感も味わえるよう心掛けている」と話す。利用者の個人別支援計画を立て、スタッフで共有。定期的にレクリエーションも企画しているそうだ。

 親会社で約20年間、営業などを経験した管理者の竹本智昭さん(49)は「ゴトシムは障害者手帳のある義務教育を終えた方が対象だが、今後、設立当初の思いであるひきこもりの人の支援にも取り組みたい。最近、医療、福祉関係者が見学に来られるケースが増えている。私たちの存在を広く知って頂き、受託作業を増やしながら、仕事を通じて社会に貢献したい」と話している。

 問い合わせはゴトシム名張事業所(0595・42・8155)まで。

スタッフとともに竹本さん(前列中央)と森さん(同右)(提供写真)

2024年7月13日付871号22面から

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