「表現の場として活用される一歩に」。奈良県宇陀市に住む坂育夫さん(74)はこのほど、同市榛原天満台西に「まちかどギャラリー」を新設した。きっかけは、今年2月から津市の老人ホームに入所した宇陀市榛原萩原の中井礼子さん(89)が、引っ越しに伴い、処分を考えていた自作の油絵を譲り渡したことで、「もっと皆に見てほしい」と中井さんにとって最初で最後の個展を開くことになった。
今年2月、坂さんが引っ越しの片付けを手伝いに行った際、中井さんから「大事に飾ってくれる人がいれば差し上げたい」と処分を考えていた絵を譲り受けた。坂さんは「こんなに上品な絵は自分だけではもったいない」との思いから個展の開催を提案した。
開催場所に決めたのは、坂さんが知人から借りていた事務所。床面積約50平方メートルほどの大きさで、自身が作る版画の保管場所などに使っていた。2、3年前から子ども食堂や将棋の遊び場など「何かに活用できないか」と考えていたが、そのままにしていたという。
個展の開催を決めてからは散乱していた作品などを整理し、室内を掃除。汚れが目立つ壁は白いペンキを塗り、壁掛けの絵画が奇麗に見えるよう工夫した。
展示するのは、旅行好きな中井さんが海外で目にした自然風景を題材に、2号から30号のキャンバスに描いた二十数点。画家のミレーやルノワールの名画を模写した作品もある。「丁寧で誠実、見ていて気持ちの良い絵。個展に来た人にも感じてほしい」と坂さん。作品は額縁を除き希望者に無償で譲るそうだ。
同ギャラリーは今後、イベントやミニコンサートの会場など「地域の憩いの場として作品展示に限らず幅広く活用していきたい」という。
展示は3月22日から28日までの午前10時から午後4時。会場には駐車場がないため、公共交通機関や徒歩での来場を呼び掛けている。入場無料。
展示会についての問い合わせは坂さん(080・1271・4403)まで。