三重県名張市は2月22日、総額294億6600万円の2024年度一般会計当初予算案を発表した。16年度から固定資産税の標準税率に0・3%を上乗せしてきた独自課税「都市振興税」(約8億5000万円)の廃止などで、市税が減収となる一方、人件費や扶助費の増加などで2億2400万円(前年度当初比0・8%)増となり、過去最大の予算規模となった。この日の会見で北川裕之市長は「投資的経費が大きく伸びているわけではなく、義務的経費が伸びている結果として過去最大の予算規模となった」と述べた。29日の市議会本会議に提出する。
歳入は、市税全体が13・6%減の86億7637万円を計上。個人市民税は定額減税などにより10・6%減の33億7290万円、法人市民税は14・6%減の5億9890万円と試算した。固定資産税は、23年度末での都市振興税廃止に伴い18・6%減の39億5177万円と見込む。
繰入金は、ふるさと応援基金や財政調整基金などの増額で185・9%増の12億2026万円を計上。地方交付税は、市税収入減に伴い9・5%増の66億170万円とした。
歳出は、人件費が退職手当の増額などで6・9%増の52億7915万円。扶助費が児童手当給付費や民間保育所措置費の増額などで4・7%増の79億1206万円に膨らんだ。投資的経費は、14・9%減の22億7953万円と抑制した。
市の貯金に当たる財政調整基金の残高は、24年度末で19億5532万円を見込み、市民一人当たり(24年1月1日現在の住民基本台帳人口7万5228人)は2万5990円。借金に当たる市債残高は24年度末見込み299億8465万円で、市民一人当たりは39万8580円になる。
8年に渡って徴収した都市振興税について、北川市長は「一定の成果は出した」との認識を示した。大きな財源を失った今回の予算編成は「かなり苦心した」としつつ、「市民生活をしっかりと守る予算、これから先を見据えた元気のもととなる予算、そういう所はしっかり押さえた」と述べた。
市によると、予算要求時点では約15億円の収支不足が生じていたため、多くの事業を見直すなどして財源を捻出した。主なもので、恒例の名張川納涼花火大会については実行委員会への補助金(200万円)を廃止、市社会福祉協議会に運営を委託している福祉まちづくりセンター(元町、イオン名張店3階)については委託料の予算を600万円から100万円へ大幅に削減する。
北川市政で力を入れてきた観光分野で、新規事業はなかった。北川市長は「必要な予算はしっかりとっている。新たな取り組みよりは、軌道に乗せたものをしっかりと、成果を出していく段階と思っている」と説明した。
主な新規、拡充事業などは次の通り。
▼社会福祉法人こもはら福祉会が運営する西田原保育園(1978年建築、2010年に市から民営化)が、法人本部近くに移転するための補助金(3億8398万円)
▼市庁舎の照明設備を全てLEDにするなど庁舎整備改修(2億1353万円)
▼昨年6月の豪雨で被災した坂の下橋(安部田)の復旧に向け橋脚を新たに造る工事(1億2330万円)
▼23年度末で閉所する大屋戸保育所の解体撤去工事(4276万円)
▼市の公共施設224か所うち市庁舎や市総合体育館など50施設の劣化状況を把握するため専門家が調査(2746万円)
▼市発注の公共工事を巡る贈収賄事件を受けた再発防止の取り組みとして、インターネットを利用した電子入札を導入(655万円)。24年度は実証実験、25年度から本稼働予定。
▼名張川改修工事(引堤)に伴って整備する親水広場の利活用に向けた基本構想作成(615万円)
▼伊賀市と京都府笠置町、南山城村の4市町村でごみ処理広域化検討(339万円)
▼子ども食堂などと連携し子どもの状況把握やヤングケアラー支援など(200万円)
▼まちづくりに関する全国の先進事例や外部有識者から学ぶ講演会などの開催など(150万円)
▼災害時に自ら避難することが困難な避難行動要支援者ごとに個別避難計画を策定(89万円)