【身振り手振りを交えて外国人住民に避難所のルールを説明する参加者=名張市役所で】

 災害が起きた時に言葉や習慣の異なる外国人住民を円滑に避難所へ受け入れるための訓練が1月21日、三重県名張市で初めて行われた。地域の自治防災組織や消防団、日本語教室関係者ら約40人が参加し、外国人住民の対応を実際に体験した。

支援の経験などを話す矢冨さん=同

 県と市の共催で、三重県国際交流財団(津市)が実施。前半では、熊本地震や佐賀県で発生した豪雨災害などで外国人支援に従事した佐賀県国際交流協会の矢冨明徳さんらが講演した。

 矢冨さんは「日本語が分からないため避難情報が届かない」「自国と災害が違うためどうしたらいいかわからない」など、災害発生時に外国人が直面する課題を説明。災害情報を多言語に翻訳する活動をしてきたが、「翻訳が終わる前に情報が変化する」など、外国人への情報の伝わりにくさを指摘した。熊本地震の際には、200人ほどが集まる避難所で「誰も話し掛けてくれない」と涙を流して話す外国人がいたことに触れ、「必要なのは声掛け」と訴えた。

 後半では、矢冨さんが進行役となり6班に分かれて外国人避難者の受入れを体験。「立入禁止」を「なかにはいらない」、「使用禁止」を「つかわない」に直すなど避難所でよく使う言葉を外国人にも伝わりやすい「やさしい日本語」に書き換えたり、ピクトグラムなどが採り入れられた県の情報伝達キット「つ・た・わ・るキット」を活用したりして外国人避難者の受け入れ窓口を準備した。

避難者カードに記入する外国人住民をサポートする参加者=同

 その後、日本語が堪能ではない市内在住の避難者役の外国人14人(ベトナム、フィリピン、中国など)に協力してもらい、実際に対応。同市で実際に使われている「避難者カード」に氏名などを記入してもらった後、食事の配布時間やごみの捨て方など共同生活で守ってほしいことを身振り手振り、スマートフォンの翻訳アプリも使って説明した。

 避難者カードの記入時には、「家屋被害」「特記事項」「備考」などの言葉が並ぶ様式を外国人に説明するのに参加者は苦戦。氏名欄については「名前が長くて入りきらない」といった声が上がった。

 訓練後の振り返りで、参加者から「『やさしい日本語』をもっと勉強する必要がある」「日頃から外国人とのつきあいが大切」「事前に防災情報を伝えておく昼用がある」「外国人用の避難者カードを用意すべき」など、さまざまな声が上がった。

 県内に住む外国人は約5万7000人で、名張市内には約1200人が暮らしている。

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