【電飾の前に集まった点灯式の参加者たち=名張市富貴ケ丘1で】

 がんや難病患者らで組織する「がんを明るく前向きに語る・金つなぎの会」代表、広野光子さん(82)が三重県名張市富貴ケ丘1の自宅を電飾で彩るようになってから30年目の冬を迎えた。病気で亡くなった夫の鎮魂の思いから1本の庭木で始めた電飾は、塀や玄関などにも広がり1万個超になっている。病に倒れた人を思い、闘病する人を励ます「祈りの電飾」が、今年も人々の心を明るく照らす。

今年も電飾を灯した広野さん=同

 広野さんは元情報紙記者で、51歳だった1992年に乳がん、翌年に卵巣がんが見つかり、抗がん治療を受け始めた。闘病中の94年2月、夫博民さん(享年64)を肝臓の病気で亡くした。

 その年の12月、2人の息子が幼かった時に夫と一緒に飾り付けて楽しんだクリスマスの電飾を押し入れから出し、1本の庭木に巻き付けたところ、心が安らぎ温まるのを感じたという。翌95年に同会を立ち上げ、その年の電飾は1本から3本に増えた。

 その後も亡くなった友を思い、電飾の数を年々増やしてきた。以前は1人で飾り付けていたが、近年は会の仲間や2人の息子らが作業に協力している。

 12月1日にあった点灯式には、会員や近隣住民ら約20人が集合。カウントダウンの後、雪の結晶や星、トナカイなどをかたどったLED(発光ダイオード)が一斉に灯ると、「わぁ」と歓声が上がった。

 広野さんは「一時は80歳で幕引きしようとも思ったが、頼んだわけでもなく息子たちが手伝ってくれるようになり、『死ぬまで続けよう』と決意させてくれた。光を皆さんに見て頂き、大切な人のことを思うきっかけにしてほしい」と話した。

 点灯期間は、1月10日までの毎夜、午後6時から同9時まで。

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