伊賀市消防団 個人口座を不適切管理

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団員報酬まとめて出金 把握後も本部黙認

 伊賀市消防団の一部で、団員報酬や出動手当として市から振り込まれる個人の預金口座を別の団員がまとめて管理し、通帳などから現金を引き出していることがわかった。各金融機関では犯罪行為など不正利用を防止するため、開設時の本人確認を厳正に行っており、原則として第三者による通帳やキャッシュカードの利用を認めていない。集めた金はそれぞれでプールし、活動費などに充てていた。団本部は昨年11月の時点で不適切な活動費の徴収を把握していたが、「個人口座への入金後は関知できない」とし、黙認している。【1月7日にあった消防出初式に参加した伊賀市消防団員(記事と写真掲載の団員とは関係ありません)】

団員1115人の3割

 団員は市内居住の18歳以上が対象。4月1日現在で、女性部団(員)と支援団員を除く人数は10分団35部131班で計1115人。報酬は今年度から一部改正され、年額が団員1万5千円、班長2万4千円、部長2万8千円、最高額の団長9万円。出動時などの手当は1回または1日千円から4千円。YOUの調べで、そのうち報酬と手当の全額が通帳管理という対象者は少なくとも250人以上にのぼり、報酬分だけの大山田分団を含めると、350人に達する。

 内部資料によると、全額を通帳管理していたのは昭和の合併以前の旧村が概ね単位になる「部」が上野西、上野北、上野南、島ケ原の4分団に所属する6部。人数は1つの「部」で13人から53人。区が単位の「班」では伊賀と上野中の両分団に所属する4班で、各10人前後だった。徴収金額は人数の多い団体で年間100万円近くに及ぶ。

 問題発覚は、昨年の市議会9月定例会で報酬や手当を受け取ったことがないという団員の話が取り上げられたのがきっかけだった。奥伸也団長(59)は取材に対し「通帳管理について団本部として何も言えない。各部や各班の話」と答えた。

 団員は通帳管理をどう捉え、実態はどうなっているのか――。
 上野地区の幹部団員は所属する部で委任状を作成し、各団員に署名させた上で全員分の通帳を一括管理している。集めた活動費の一部について「火災発生や台風警戒時は長時間拘束される。個々で休憩時の食べ物や飲み物を買いに行くと困るので、まとめて購入している」と話す。

非常勤公務員の自覚 矛盾感じ葛藤も

 島ヶ原分団所属の元幹部団員は組織の再編時に通帳管理にするかどうか、皆で話し合って決めた。「各自で負担していた安全装備の費用全てを集めた活動費から充てるようにした。個人支給になる以前からの入団者も多いので、従来のように会計担当の団員に任せるほうがいいという意見が占めた」と説明した。

 伊賀分団所属の団員は同じ金融機関での口座開設を指定され、キャッシュカードの暗証番号が全員同じだと後から気付いた。活動の参加実績に応じて一部返金されたが、会計報告はなかったという。

 通帳管理以外にも、各団員から報酬や手当の一部を直接徴収するケースも多い。1万5千円から2万4千円の報酬分を活動費として毎年収めている上野地区の団員は「活動費から手袋などの安全装備や訓練時の飲料、慰労会費に使うことは納得している。通帳管理は非常識だと思う」。

振込通知書 渡されない人も

  取材を進める中、通帳管理をしている部に所属する団員のうち、口座への入金を知らせる市からの個人宛振込通知書を渡されていない人がいることもわかった。市は2007年4月から個人支給に切り替えている。【全団員に配布されるはずだった口座振込通知書(一部を加工しています)】

 この団員は上野地区の部に所属。地元地域で協力し合い守ってきた消防団活動に誇りを持って参加する一方、不適切な通帳管理を強いられることに矛盾を感じてきた。見直すべきだと思うが、先輩団員に面と向かって指摘できず、心の中で葛藤が続いている。

 所属する班では勧誘した新人団員に報酬や手当が支給されていること、部全体で管理し活動費として使っていることを説明するが、同じ部の別の班は説明していないという。「私は従来からの流れでこれが当たり前だと言い聞かせているが、非常勤公務員という自覚があり、新たに入団した人に通帳を預けろというのは心苦しい。違反行為という認識は持っている」と心の内を明かした。

 市出納室によると、団員報酬や手当の口座振込通知書は「慣例」で消防本部、消防団本部を通じて配られ、他は郵送と説明。会計管理者は通知書が届いていない団員の存在を知らなかった。市は経費削減で通知書の送付を17年度分で廃止し、現在の入金確認は通帳に担当課名を印字する方法に変更している。

 

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