11月20日に開幕するサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会の日本代表メンバーに、伊賀市出身でJ1湘南ベルマーレのFW町野修斗選手(23)が追加招集された。初のA代表入りを果たした7月の東アジアE‐1選手権で大会得点王に輝き、今季リーグで2位(日本人選手1位)の13点を挙げるなど、決定力が武器のストライカーが、日本を勝利に導く。
町野選手は身長185センチ、体重77キロ。11月8日に所属チームの公式ウェブサイトで「日本を代表してカタールの地で戦えることに、誇りと責任を持って行ってきます。そして、今まで関わってくれた全ての人に感謝しています。プレーで恩返しできたらと思っています。応援よろしくお願いします」とコメントを発表した。
2014年(ブラジル)、18年(ロシア)のW杯には、名張市出身でJ1ヴィッセル神戸(当時はセレッソ大阪)のMF山口蛍選手(32)が選ばれており、3大会連続で伊賀地域出身の選手がメンバー入りした。
町野選手は、中瀬小のスポーツ少年団で監督を務めていた父・理さん(61)や2歳上の兄・達哉さん(25)の影響もあり、3歳でサッカーを始めた。城東中時代は地元の「FCアヴェニーダソル」でプレーし、履正社高(大阪)を経て18年にJ1横浜F・マリノスに加入した。
翌19年に移籍したJ3ギラヴァンツ北九州では8得点を挙げてチーム得点王になり、J2昇格に貢献。21年に湘南へ加入し、2シーズン目の今季はリーグ戦34試合中30試合(うち先発19試合)に出場し、終盤までゴールを重ねた。
父「得点決めアピールを」
父・理さん「代表入りを聞いた時は鳥肌が立った。本人の夢でもあるので、世界にアピールする場で得点を決めてほしい」
兄・達哉さん「試合では運を呼び込んで、ここぞという時に点を取る勝負強さがある。選ばれたことに驚きはなかった。本人には『よかったなあ』と声を掛けた」
中瀬地区住民らによる後援会「町野修斗君を励ます会」樋口良紀会長(63)「連絡を聞いた時は驚いた。ピッチに立って現場の雰囲気を感じてほしい」
恩師「世界相手にゴール」
高校時代の恩師・平野直樹監督(57)は同じ伊賀市出身。当時の町野選手は「物怖じせず、恐い物知らずの性格」だったと振り返る。ストライカーらしい体格に加え、左右両足のシュート力やボールコントロールの良さなどから、FWとして1年秋にはAチーム入りしていた。大きな舞台を目指し、大志を抱いて入学する生徒たちの背中を今も押し続ける指揮官は「ストライカーとしての仕事は得点を取ること。世界相手にゴールを奪ってほしい」と期待を寄せている。
「伊賀忍者特殊軍団代表阿修羅」代表の浮田さん「何度も決めて」
町野選手が今シーズンから始めたゴール後の「忍者ポーズ」は、忍者が印を結ぶ時の構えに近い形だ。11月9日のチーム記者会見では伊賀上野城での手裏剣体験で教わったと明かし、「僕の象徴である忍者ポーズを世界で見せたい」と語っていた。忍者ショーの実演などを通して忍者の歴史や文化を発信している「伊賀忍者特殊軍団阿修羅」代表の浮田半蔵さん(62)は「忍者を世界に広めてくれてうれしい。たくさん点を取り、何度もポーズを決めてほしい」と期待を込めて話した。
後輩も忍者ポーズでエール
FCアヴェニーダソルでは、元Jリーガーの関本恒一監督(故人)らに指導を受けた。コーチを務める薮中一真さん(36)によれば「当時は線も細く、メンタル面にムラがあったが、キック力は大きな武器だった」という。そんな町野選手を「選手としてやるべきことができるように」と、ボランチ(守備的MF)など中盤を経験させた。
薮中さんら指導者が町野選手の本格的な成長を感じ取ったのは高校やJリーグに進んでから。「チャンスをものにできているのは、言い換えれば、きちんと準備ができている証」と分析する薮中さんは「どのチームにいても、チームに貢献したいという姿勢がぶれない。日本代表のベスト8入りに貢献してほしい」と話した。
チームでは、代表入りした町野選手に届けようと、動画をインスタグラムに掲載。忍者ポーズをした選手たちが「修斗君、ワールドカップ頑張って」「森保さん、修斗君を出してください」と呼び掛けた。
城東中で英語の授業を受け持った藤田勝也教諭は「当時から海外での活動を視野に入れていたのか、英語の授業に熱心で、活発に発言する子だった」と振り返る。特に英会話では、ジェスチャーを交えながら自分の考えを伝えていたそうで、「表現する力が高い」と評価していた。
カタールW杯 日本代表のグループステージ日程
グループE
11月23日(水)午後10時 vsドイツ
11月27日(日)午後7時 vsコスタリカ
12月2日(金)午前4時 vsスペイン
※キックオフ時刻はいずれも日本時間
2022年11月19日付832号1面から