【自宅で「鳥獣害便り」を編集する山村さん】

「農家の力になりたい」

 「長年発行してきた『猿新聞』に代わり、『鳥獣害便り』をネット発信します。引き続きご愛読ください」と話す、三重県名張市矢川の山村準さん(89)。2006年から16年にわたり猿、鹿、イノシシなど鳥獣害の現状や対策を手作りの月刊紙「猿新聞」にまとめ、市内の国津、つつじが丘、比奈知などの被害の多い地域を中心に、回覧用として1600部無料で配布してきた。

 創刊当時、餌を求めて山から里へ下りてきた猿により、丹精込めて作った野菜が全滅する被害が増える中、「このままでは農業者の生産意欲が減退し耕作放棄地が増えてしまう」という危機感を持ったのがきっかけになったという。

 しかし、山村さんや情報収集と印刷・配布などで発行を支えてきた「名張鳥獣害問題連絡会」(会長・古川高志さん)のメンバーが高齢化してきたこともあり、今年4月の190号で廃刊することになった。

 パソコンでの編集作業は毎日長時間に及び、指先、肩、目に疲労が蓄積。2年前からはワイド画面のモニターで編集しており、「文字が大きく編集作業も楽になったが、歳には勝てない」と笑う。

 「獣害情報の発信を通して農家の方の力になりたいという気持ちは、今も変わらない。動けなくなるまで、まだまだ頑張りたい」と話す山村さん。4月から新媒体の「鳥獣害便り」を年4回、ウェブサイト「名張獣害問題連絡会」(http://sarushika.moo.jp/)で配信することにした。

「獣害は永遠のテーマ」

 取り上げるテーマは変わらないが、被害状況や対策などの具体実例を多く載せていく方針。「獣害問題は永遠のテーマで、根絶することは難しい。農業を明るく、楽しいものにするために、微力ながら頑張りたい」と山村さん。鳥獣害の防除を担当している市産業部農林資源室では「山村さんの精力的な取材活動に基づく手作りの鳥獣害情報は、今では市民の貴重な啓発資料になっている。今後も発信を継続されることはありがたく、支援していきたい」と話している。

「鳥獣害便り」の創刊号

2022年4月23日付818号21面から

- Advertisement -