長年、縫製の仕事に就いてきた名張市東田原の美馬典子さんが、年月をかけて考案し、仕立てた車椅子用のひざかけ。親しい人などにプレゼントして喜ばれてきたが、4月29日に自宅近くであるマルシェ会場で展示されることになった。
夫が入院した30年ほど前、院内で病衣1枚のまま車椅子に乗り1日を過ごす患者を見かけた。「覆ってあげられる物がないか」と気になったが、思いを遂げられないまま、仕事に忙しい生活が10年近く続いた。
「車輪に巻き込まれたり、介護者の邪魔にならないようにしたい」「簡単に使えて危なくないものを」など、長年の思いを実現させようと、さまざまな事態を想定し、デザインを考え始めた。
ひざかけが何かに引っ掛かったり、ずれたりしないよう、椅子のブレーキ部分と座椅子の下で結んで固定することにした。更に着脱しやすいよう、前部にマジックテープを付け、ひざ部分は膨らみを持たせた。
結びひもの太さも考え、汚れても使えるよう裏表両方使えるリバーシブル仕立てにした。
最初はシーツを素材に試行錯誤を重ねた。その後、本人のお気に入りの着物やコートを使って作れば気分も上がるのではと制作。軽くて暖かく、使い勝手を考え丁寧に作られたひざかけは、利用者からも好評だった。
この評判を聞いた近所の岡村章子さんが感銘を受け、自身が主催するマルシェに美馬さんのひざかけを数点展示し、お披露目することになったという。
「着物や服のリメイクにもなるし、喜んでもらえるのがうれしい」と美馬さん。「使う人のことを考え、全工程を1人で丁寧にする思いやりあふれるひざかけをぜひ見に来てもらえたら」と岡村さんも呼び掛けている。
ひざかけも展示 こぱんでマルシェ
米粉に特化したシフォンケーキを提供する名張市西田原の「シフォンのお家copain」で、米をテーマにした初のイベント「こぱんでマルシェ」が4月29日午前10時から午後4時まで開かれる。
当日は米粉シフォンケーキを始め、生米パンやもち米粉の菓子、植物油せっけん、ハンドメイド布小物、「やちむんの里」で知られる沖縄県読谷村の読谷山焼などが出展され、着物リメイク品「車椅子ひざかけ」が展示される。ソープカービングのワークショップ(1000円)もある。
問い合わせは主催の岡村さん(0595・65・3550)へ。
2022年4月23日付818号11面から