三重県伊賀市の沖区が探していた手引き霊柩車の譲渡先が、映画やドラマの小道具などを手掛ける東京都立川市の企業「リンクファクトリー」に決まり、3月下旬に引き渡しがあった。解体処分の可能性もあったが、インターネットを通じて価値を見出され、新たな土地へと移った。
手引き霊柩車は全長約3・7メートルで、同地区の不動寺の蔵で保管されていた。1980年に沖区が群馬県の会社から購入し、土葬から火葬に移行する90年代まで地元住民によって使われてきた。新住職就任に伴い処分することに決まったものの、解体への抵抗感から、昨年11月上旬にYOUのネットニュース(https://www.iga-younet.co.jp/2021/11/03/46857/)と紙面で譲渡希望者を募った。
その結果、全国から計約600件の問い合わせが殺到。このうち東京、埼玉、神奈川、静岡、兵庫各都県の5人が最終候補に残り、今年1月に区で話し合って1人を決めたという。
人目に触れる活用も
選ばれたのは、同社の社長で造形作家でもある相蘇敬介さん(47)。ツイッターで拡散されていたYOUのネット記事を目にし、すぐさま自ら電話で申し込んだという。
引き渡しは3月20日にあり、東京の運送会社の2トントラックをチャーターした相蘇さんは、友人らと不動寺を訪問。霊柩車の供養は1年前に済んでいたが、区側の配慮で相蘇さん立ち会いのもと再度行われた。
供養後、相蘇さんや同寺の関係者らが力を合わせて霊柩車をトラックの荷台に引き上げ、慎重に東京へと運ばれた。
相蘇さんは「これから新たに作られることのない、大変貴重なもの。造形制作の参考に信仰関係の資料を収集しており、手引き霊柩車もその一つとして保管する。撮影関係の仕事をしており、人目に触れるような活用の仕方も考えていきたい」と話していた。
2022年4月9日付817号2面から