三重県名張市の名張商工会議所が創立60周年を迎えた2018年に創設した「名張商工会議所長寿企業表彰制度」。表彰された43社をより多くの人に知ってもらおうと、追加取材とデータをデジタル化して一つのホームページにまとめたサイトが開設された。表彰は、会員として10年以上経過した企業で、市内に本店、本社を有し、100年以上存続し経営する企業が対象。YOUでも毎週1社ずつ、創業年代順に企業を紹介していく。名張の長寿企業サイト
創業1868 明治元年
名張市赤目町柏原141
電話 0595-63-0488
代表者 杉本 隆司
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■ 取扱商品・サービス
地元産の酒米を中心に、赤目滝の伏流水で日本酒を造っています。中でも「純米大吟醸瀧自慢」は伊勢志摩サミットのワーキングランチの乾杯酒で、「辛口純米滝水流」(はやせ)は伊勢志摩サミットの晩餐会で食中酒として、それぞれ振舞われました。世界各国の首脳たちが堪能した日本酒を、是非ご賞味ください。
■ 事業の沿革
当蔵は明治元年(1868年)に初代の杉本杉松が伊賀龍口から現在の赤目町柏原へ出て酒造りを始めたのが創業です。その後2代目英二、3代目和三と受け継がれ、昭和31年(1956年)に朝日酒造株式会社として法人成りをいたしました。それから4代目の私隆司の代で平成4年(1992年)に、現在の「瀧自慢酒造株式会社」に社名変更し、少数精鋭で酒造りに取り組んでいます。平成26年(2014年)にイギリス・ロンドンで開催された「IWC」(インターナショナル ワイン チャレンジ)では金賞を受賞したり、平成28年(2016年)に開催された伊勢志摩サミットでは乾杯酒や食中酒として当蔵の酒が振舞われたりするなど、世界各国の方々からも高い評価を得ております。
同社2階の展示場には、創業以降使っていた貴重な道具があり一般に公開している。
■ 経営理念・特色
特色は、なんと言っても酒造りへのこだわりです。その酒米に最適な浸漬時間を徹底する為の秒単位の手洗いや、管理が行き届くよう小さなタンクや温度管理可能なサーマルタンクを使用。酒質の劣化を防ぐための大型冷蔵庫での瓶貯蔵など、小規模な蔵元だからこそ出来る、隅々まで手をかけた酒造りが特色です。
■ 酒造りに生活のペースを合わせる
Q 150年を超える歴史があるんですね。
A 今年は創業154年目になりますが、戦中戦後の十数年間は酒造りを中断しています。戦時中は米を主食に回さなければならず、政府の方針で嗜好品である酒の製造が制限されたわけです。先代の父が20代半ばのころでしたが、その間で多くの得意先を無くし、まさにゼロからの再出発でした。父は伊賀盆地内の商圏を自ら回り、少しずつ得意先を増やしていきました。
Q 4代目として、酒造りの考え方を教えてください。
A 伊賀盆地特有の寒暖差が激しい気候とミネラル分豊富な水で育ったおいしい米、こうした恵まれた環境を生かした酒造りをしています。心掛けているのは、とにかく丁寧に造ること。玄米の削り具合によって洗米時間や浸漬時間は微妙に変わります。これらの作業を秒単位で丁寧に行っています。
また、麹は生き物ですので、気温の変化によって発酵の進み具合も変わります。麹の温度(品温)を携帯電話の画面で常に確認し、夜中でもほぼ2時間おきに起きて様子を見に行きます。酒造りは毎年10月から始まり、新酒ができる12月まで続きますが、その間は睡眠、食事など、生活のペースを全て酒造りのために合わせています。
「百人が一杯飲む酒より一人が百杯飲みたくなる酒」――。これは私が日頃から考えていることです。香りや味にインパクトがあってもクセの強すぎる酒よりも、料理のわき役の食中酒として、食事と一緒に何杯でも飲んでいただける酒を造りたいですね。
Q 事業が永く続いてきた要因は?
A 現状をそのまま維持するのではなく、少し背伸びをしてでも、時代の変化に合わせて何かをプラスしてきたからここまで生き延びることができたのではないかと思います。
コロナ禍もあって酒はなかなか売りにくい時代です。地方の蔵元では苦戦を強いられ、廃業するところも出ています。そういう厳しい時こそ新しい「ネタ(特徴)」を持った商品を出していく、それが消費者に支持されれば、翌年にはそこに力を入れて取り組む、そういうことを地道に続けていくことが必要だと思います。また海外では日本食や日本酒がブームですので、東南アジアを中心に積極的に販路を拡大していきたいと考えています。
Q 事業の後継についてはいかがですか?
A 醸造関係の学校で学んだ27歳の息子が、現在私と一緒に酒造りをしています。いずれ5代目として事業を引き継いでもらえればと思っています。
瀧自慢酒造の外観