【手引き霊柩車を紹介する江藤さん(左)と福井さん=伊賀市沖で】

 三重県伊賀市沖には、1980年代から90年代まで地元住民によって使われてきた手引き霊柩車があり、沖区が譲渡先を探している。処分は決まったものの、解体への抵抗感から「有効に活用してくれる人に無償で譲りたい」としている。

 全長約3・7メートル、幅約1・3メートル、高さ約1・7メートルで、名は「風冠号」。80年春に、住民の意向を受けて沖区が群馬県の会社から95万円で購入し、運んできたとの記録が残る。荷車にひつぎを納める箱を取り付けた形で、屋根は二方破風、黒を基調としながらも、側面には鳳凰や龍などさまざまな彫刻が施されている。塗装の剥がれはほとんどなく、状態は良好。箱の中は何も入っていない。

 同地区にある不動寺の檀家総代長、江藤征洋さん(78)によると、地域でまだ土葬が主流だったころ、遺体を墓地まで運ぶために使われていた。「火葬が広まると、使う必要がなくなった」と話す。

 同寺の蔵の中に長年収められていたが、このほど新住職就任の儀式を迎えるに当たって蔵を空けることになり、処分を検討。しかし住民から「大切な人を送ってきたもの。解体してしまうのはしのびない」「壊したらたたりがあるのでは」などの声も上がり、まずは人に譲る方向で進めることになった。今春には霊柩車の供養を済ませ、短文投稿サイト「ツイッター」の同寺のアカウントで譲渡希望者を募ったが、申し出る人が現れなかったという。

 沖区長の福井正倫さん(68)は「霊柩車には住民のさまざまな思いがあり、出来ることなら解体は避けたい。珍しいものを収集している人や、映画撮影のために探している人など、このままの形で引き取って頂けたら」と話している。年末までに引き取り希望者がいなかった場合は、やむを得ず解体処分することになるという。

 問い合わせは福井さん(0595・38・1821)へ。

後方の様子

2021年11月6日付807号26面から

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