3か月ぶりとなる今回は、名張市南東部の山間に位置する国津地区を歩く約10・5キロ。昔から農林業の盛んな国津地区の、山あい、谷あいに点在する小集落を巡ります。(取材・山岡博輝)【1枚目の写真 保育所近くの民家を見上げて歩く】
9月12日午前10時25分、同地区のコミュニティバス「あららぎ号」の発着点になっている「くにつふるさと館」前を出発。まだまだ強い日差しはあるものの、少し風があって涼しく感じられました。
県道を進むと間もなく、今年3月に閉校となった旧国津小学校の入口に。記者が訪れる少し前の9月上旬、眼下の水田には「旨」という文字を形どった「田んぼアート」が出現していました。以前、子どもたちと地域の人たちが一緒になって田植えや稲刈りに汗を流していた光景を思い出しました。
小学校入口から県道を折れ、ニシキゴイが泳ぐ池や色とりどりのコスモスが咲く土手を横目に進むと、民家の脇に「北畠具親城跡」の看板が。国津地区の資料によると、この城跡は市内で最も規模の大きい山城として知られ、ここから少し上ると遺構が見られるそうです。
県道を渡って集落の間の道を上りかけると、稲刈り中の水田脇に並ぶ電柵の支柱にトンボがずらっと並んで、秋の訪れを感じさせます。坂を上りきった三差路から木陰の中を少しずつ下り、県道に合流しました。
【県道のすぐ脇にある月ノ瀬滝】
青蓮寺湖方面へ進み出すと間もなく、折戸川の途中にある「月ノ瀬滝」が現れます。県道を走る車からはおそらく見えないであろう景色を、歩いてきた優越感(?)に浸りながら眺めました。更に道を下り、午前11時すぎ、百々の集落に着きました。
【丘の上から見た百々の集落】
百々川沿いに二十数軒の民家が並ぶ集落を一周し、坂の上から眺めていると、ちょうど「あららぎ号」が発着していくところでした。前山公園の丘の途中で小休止し、百々を後にします。後で知りましたが、百々にある22軒のうち半数以上は「百地」姓でした。
県道を戻り、再び月ノ瀬滝を眺めながら、庵の集落へ。バス停脇の案内図でルートを確認した後、5分ほどで県道から分かれ、南への坂を上ったところに吉原の集落がありました。入口には寺院と集会所があり、坂の上に20軒ほどの民家が集まっています。
【庵から吉原への道】
地元の資料によれば、この寺院の東向かいの小山が「吉原氏城跡」だそうで、国津には他にも大小のとりでや山城が点在しているといいます。稲刈り時期ということもあり、コンバインに乗った年配の男性とすれ違いました。
吉原を出て、再び折戸川沿いに。真夏よりは涼しいものの、時折聞こえるセミの声は、まだまだ夏を感じさせます。アップダウンの続く小道を、川沿いに広がる布生下出の家々を眺めながら東へ進み、国津神社の前へ。ちなみに、国津地区とその周辺には数多くの同名の神社があります。
【布生上出から神屋への道路脇に咲くコスモス】
2本の県道が合流する布生上出から進路を逆に取り、ツクツクボウシの声を聞きながらゆっくりと歩を進めます。山沿いからキジのような高い鳴き声が聞こえるなか、午後1時10分にスタート地点に帰着。歩数計は約1万5000歩を指していました。
自然と歴史情緒がいっぱいの国津地区。史実や伝記などを絡めて歩いてみると、更に興味深い発見があるのではないでしょうか。名張駅にも発着する「あららぎ号」、隣接するつつじが丘団地までの路線バスなど公共交通機関も利用できます。
- Advertisement -