名張市の観光の代名詞ともなった、同市青蓮寺での観光ブドウ狩りが、今年で50年を迎える。半世紀にわたる歩みと今後の課題について、運営する青蓮寺湖ぶどう組合の栢本健司組合長(57)に話を聞いた。【ブドウ狩りを楽しむ来園した子どもたち(2019年7月撮影)】
特産品づくり、誘客の工夫 歩み振り返る
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観光としてのブドウ狩りが始まったのは青蓮寺ダムが竣工した1970年。その15年前から5、6軒の農家が地区の特産品を作ろうと、山の一部を開墾し苗木を植えてブドウ作りを始めていた。
ダムの完成は、ブドウの収穫だけで生計を立てようとしていた農家には朗報で、同組合を作るなど見学に訪れる観光客を取り込むためのチャレンジを始めた。73年には県指定の民宿もオープンし、ブドウ狩りとセットに農村を歩くコースが話題を集めた。
77年から2年間、農林水産省の「自然休養村事業」の助成を受けて、ブドウ園を拡張するための大規模開拓が行われた。また、アクセスを良くするための送迎用マイクロバスを購入し、入園客の送迎を開始した。
79年にはブドウだけでなく観光イチゴ狩りを始めた。「ブドウの収入は7月から9月のみで、冬季の収入を得るために取り組みました。私の父親を含め、イチゴ作りは皆、素人で、指導を仰ぎながらも自己流でやってきたようです」と話す。
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81年にはそれまでの露地栽培に加えビニールハウスによる栽培を始め、ブドウ狩りの開始日を従来の8月1日から7月20日に前倒しすることができた。82年には、百合が丘団地の造成に合わせ、近くに「ぶどう狩り案内所」を新築した。
大きな試練 販路の拡大も
ブドウ狩りなどの観光農園事業は順調に推移し、70年のスタート時から毎年入園客が増加。92年には年間入園者が10万人弱を記録した。「ピーク時は、(同市)夏見の交差点からダム入口まで車や大型バスが数珠つなぎになったのを覚えています」。ゼロからスタートしてブドウの産地を作った功績などに対して、2度の三重県知事賞や農林水産大臣表彰などを受賞した。こうして2005年には累計入園者が200万人を突破した。
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しかし現在、ブドウ狩りは大きな試練を迎えている。レジャーの多様化もあって、昨年の入園者数はピーク時の3分の1の3万人に減少。また、組合員の高齢化や後継者不足により、ピーク時に38軒あった組合員数は15軒に半減している。
「この現状に対して指をくわえて見ているだけでは駄目」と栢本組合長。その打開策として「第一は集客アップです。今までの『食べ放題』の方式を考え直す時期にあり、次の目玉商品を打ち出したい。次に、ブドウの品質向上と品種の多様化です。今注目されているのは大房で完熟のシャインマスカットで、皮ごと食べられて子どもにも人気。作るのに手間がかかりますが、値段は通常の2、3倍する付加価値商品で、こうした新品種をどんどん採り入れていきたい。またネット販売の拡充など販路の拡大も課題」と話す。
50周年の今年は、7月20日(月)から10月31日(土)の期間中、来場者に抽選でのプレゼントや楽しいイベントを企画中だ。
2020年2月22日付 766号 22面から