「低い受診率変えたい」全国で啓発

 子宮頸けいがんは、定期的に検診を受けていれば進行を防げるにもかかわらず、国内の検診受診率は先進国の中でも極めて低い(注1)。こうした現状を変えようと、4月9日を「子宮頸がんを予防する日(子宮の日)」として日本記念日協会に申請し、認定を受けたのは、認定NPO法人「子宮頸がんを考える市民の会」(東京都豊島区)だ。
 同会は、細胞検査士会とともに、子宮頸がん検診の受診を勧め、女性の健康を後押しする「LOVE49(しきゅう)プロジェクト」を立ち上げるなど、全国で啓発活動を続けている。今回は、同プロジェクトや検診の課題などについて、同会の渡部享宏理事長(46)=写真=に話を聞いた。

 ―4月9日を「子宮頸がんを予防する日」として登録し、プロジェクトが始まったのは2009年ですね。約10年経ちましたが、成果についてどのように感じられますか

渡部理事長 啓発活動は全国に広がり、今では47都道府県全てで街頭アクションを行っています。活動開始当初に比べ、「子宮頸がん検診」という言葉の認知度は上がったと思います。
 ただ、まだ受診率は低く、しかも受診者は固定され、受けない人は受けないままです。また高齢化も目立ちます。子宮頸がんは20、30代が一番多いので、その年代の受診率が70%以上になるよう更に働きかけたいです。

 ―子宮頸がんについて「十分知られていない」と思われることはありますか

渡部理事長 基本的なことについても情報が行き渡っていないように感じます。例えば「子宮頸がんになりやすい人は?」と聞かれた時の答えは「子宮頸がん検診を受けていない人」となりますが、実際、子宮頸がんになった人の多くが検診を受けていなかったという調査もあります。
 子宮頸がん検診は、子宮頸部から直接細胞を採取し、「がんを疑うような異常な細胞がないか」を調べます。子宮頸がんは一般的にゆっくり進行するため、定期的に検診を受けていれば、がんになる前段階の細胞を発見できるので、進行がんとして見つかることはほとんどありません。
 最近では20、30代の若い女性に急増しており、厚生労働省も子宮頸がん検診の対象年齢を20歳からとしていますが、調査したところ、職域のがん検診で子宮頸がん検診を40歳以上としていた企業や、精度が問題視されている「自己採取細胞診」を子宮頸がん検診としている企業もありました。情報不足だけでなく、男性管理職中心の社会システムのまま、女性に優しくないがん検診システムが出来上がってしまっていることに問題を感じます。

HPV検査の併用 利点は検診効率化

 ―システムと言われましたが、その観点から2015年、「乳がん・子宮頸がん検診促進議員連盟」の設立に関わられたということでしょうか

渡部理事長 そうです。やはり国が動かなければ検診システムは変わりません。さまざまな団体とともに結成した連盟の応援団の事務局を務め、定期的に勉強会を開くなど連盟をサポートしています。16年と18年には厚労相に要望書を提出しました。今後も法令の整備、規制緩和、予算確保などを求めていきます。

 ―子宮頸がん検診で行われている細胞診に、原因となることが知られているHPV(ヒトパピローマウィルス)の検査を加える動きがあります。HPV検査についてお聞かせください

渡部理事長 国立がん研究センターは昨年、子宮頸がん検診としてHPV検査を新たに推奨するという指針案をまとめました(注2)。子宮頸がんの原因は性行為によってうつるHPVなので、HPVが無くなっているかどうかを調べるのは有効です。  この検査を同時に実施すると検診の効率化ができ、生涯の検診受診回数が少なくて済むという利点があります。海外ではHPV検査を導入している国も多いです。細胞診とHPV検査を併用すると異常のすり抜けがほとんどなくなるので、25歳以上の人には併用を勧めています。

 ―今後の課題は何でしょうか。また、伊賀地域の読者へのメッセージもお願いします

渡部理事長 検診を受ける人の視点で考え、受けやすいシステムづくりが重要だと思います。英国などでは女性看護師が子宮がん検診を行っています。そうすれば機会も増えますし、検診単価も下がります。男性医師による検診に抵抗がある人も、検診を受けやすくなるかもしれません。さまざまな方法を考えていけば、子宮頸がんという病気はなくすことができると思っています。
 HPVは誰でも感染するありふれたウィルスです。性交渉の経験がある人で、まだ検診を受けたことがないという人は必ず受けてください。前がん状態は検査で発見できるので、予防可能です。

注1 厚労省「女性の子宮頸がん受診割合(20~69歳)」より。米国84.5%、英国78.1%、ニュージーランド77%、オランダ64.7%、オーストラリア57.3%、韓国51.7%、日本42.4%

注2 「有効性評価に基づく子宮頸がんガイドライン2018年度版ドラフト」

伊賀タウン情報YOU 2019年4月前半(745)号」より

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