【最終の発行となった3月29日付の伊和新聞】
大正、昭和、平成、令和と地域のニュースを届けてきた三重県名張市の地方紙「伊和新聞」が、3月29日付で休刊した。事実上の廃刊で、最終の紙面では名張の春の風物詩「桜まつり」の開催を伝える記事をトップに据え、長い歴史に幕を下ろした。
伊和新聞は1926(大正15)年の創刊で、名称は伊賀の「伊」と大和の「和」が由来。同市上八町の伊和新聞社が発行し、伊賀地域を中心とする行政の動向や街の話題などを報じてきた。今年の夏には創刊99年を迎える予定だった。

終戦前後には、連合国軍総司令部(GHQ)の検閲を恐れてそれ以前の紙面などを焼却したこともあったという。55年には、同市生まれの作家・江戸川乱歩(1894‐1965)の講演を書き起こした「探偵小説雑話」(全7回)を連載したこともある。

同社によると、紙面は同市の旧市街地へは配達、市内の団地や市外の読者には郵送していた。発行部数は約40年前の数千部がピークで、現在は200部程度まで減少していたという。
4代目の岡山啓子社長(69)は、夫で先代社長の博宣さん(2022年死去)から19年に経営を引き継いだ。岡山社長は「来年で100周年を迎えるのに、やめていいのかと葛藤があったが、会社を続けるために仕方がなかった」とし、「長年の読者や広告主の皆さまに、感謝申し上げたい」と話した。
博物館の展示などを手掛ける会社で定年まで働いた後、22年に伊和新聞で記者になった千種啓義さん(82)は「記者として時代の流れを経験させてもらい、素敵な知り合いがいっぱい増えて幸せだった」と活動を振り返った。
同社は今後も印刷事業を続ける。

【関連記事】伊和新聞が3月末で休刊 98年余の歴史に区切り 伊賀・大和の地方紙(https://www.iga-younet.co.jp/2025/02/15/99927/)