【「MUNECHIKA」ブランドを紹介する曽我さん】

 三重県伊賀市島ヶ原で創業53年目を迎えるバッグの生産事業所「アイズ」。将来、4代目を継ぐ曽我宗央さん(25)を中心に、父の康弘さん(69)、母の栄津子さん(61)、姉の沙央さん(26)の4人で作業している。

 曽我さんは、長崎県の大学で経営学を専攻し、宅建の資格も取り、将来は別の道に歩む予定だった。しかし、3、4年の時、コロナ禍で対面の授業からリモートになったこともあり、実家で家業を手伝う時間が増えた。「いずれ自分で事業を起こしたい」という願望があり、「縫製を手伝ううちに、ものづくりの面白さを再認識し、いずれ家業を支えたいと思うようになった」という。

 同事業所では現在、国内の大手メーカーからブランド品のOEM(相手先ブランド生産)を受託しており、この売り上げが全体の8、9割を占めている。トート、ショルダー、リュックなどの生産を請け負っているが、縫い目一つひとつに厳しい品質基準を要求されるという。

 「要求に応える中で、着実に縫製の技術力が向上している」と話すのは、初代・長谷川昇さんの娘として長く家業を手伝い今もOEM先との折衝などを担当している栄津子さん。

 ユーザーからの品質要求に応えるため、伊賀市商工会の「ものづくり補助金」も申請。10年ほど前から、コンピューターミシンや特殊な縫製を行うハイポストミシン、皮革を薄く削る漉機など、計1千万円ほどの設備投資をしてきた。

 本業のOEM生産が好調で経営は安定しているが、曽我さんは、20代の若い感覚を生かしたオリジナル商品作りに力を注いでいる。

 一つは、自らの名前をブランド名にした「MUNECHIKA」だ。高級素材の栃木レザーを使い、「シンプルだけど、どこか魅かれるデザインを追求した。導入した新鋭ミシンを使い、縫製は細部まで徹底的にこだわった」と話す。30、40代をターゲットにした高級商品という。

 もう一つは、家族の頭文字を付けた「Yesーm」。「カジュアルで使い良さを追求し、価格もリーズナブルにしている」

家業を支える(右から)曽我さん、沙央さん、栄津子さん、康弘さん=伊賀市島ヶ原で

 昨年9月には「みえアツマル特産展in近鉄四日市」に出品し、2つのブランドとも来場者から高評価を得た。今年の5、6月には、神戸市で開かれる「ハンドメイドEXPO」と「神戸ハンドメイドマルシェ」に相次いで出品する。

 10年の縫製経験がある沙央さんは「自分の作った商品がお客さまに指名されるのはうれしい」と笑顔で話す。

 一昨年から栄津子さんが作業の様子を同事業所のインスタグラムに投稿、フォロワーは7千人を超えている。曽我さんも自身のインスタグラムで、オリジナル商品の知名度アップを図っている。

 曽我さん家族の今後の夢は、市内にショップを併設した新しい工房の設立。康弘さんは「高齢化が進み、後継者不足に悩む業界にあって、事業を承継してもらえるのはうれしい。心配もあるが、若い2人を中心に自由な発想で頑張ってほしい」と期待を寄せている。

 オリジナル商品はホームページ(https://munechika-bag.com)で販売している。

 3月29日には、同市種生の青山ハーモニー・フォレストで開かれるマルシェにも商品を出品する。

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