【昨年の収穫の様子(提供写真)】

 農福連携でバナナ栽培に取り組む三重県伊賀市下友生のNPO法人「伊賀の友」。昨夏、初めて収穫したバナナは「おいしい」と好評で、地元の高校に協力してもらうなど、さまざまな商品開発も広がっている。

上田理事長と妻の佳苗さん(同)

 同法人を代表する理事長の上田文司さんの妻、佳苗さんは、幼いころから共働きの両親に代わって育ててもらった祖母をみとったのを機に、約30年前から介護の仕事に携わっている。

 2006年、同法人を設立すると、古民家を利用したデイサービスを開始。17年には新たに障害者を中心とした就労移行支援と就労継続支援B型事業所として再スタートを切った。

 市内で「な菜ファーム」農園を運営している奥保規さんの元で利用者が施設外就労として取り組んでいた水耕栽培がコロナ禍で打撃を受けると、佳苗さんは「障害のある人とともに元気になるような農業がないか」と模索、バナナ栽培に行き着いたという。国産品は希少で、特別育成された品種「グロスミチェル」は寒い地域でも栽培できるからだ。

 栽培方法を学びに何度も県外へ足を運び、22年には佳苗さんが代表を務める「BUばな菜ファーム」を設立。水耕栽培で利用していた同市湯舟にある約1千平方メートルのハウス3棟で130株を定植させた。

 初めての収穫は昨年5月。1株に100本ほど実るバナナは、7、8月には収穫が追い付かないほど実が成り、「うれしい悲鳴を上げた」そう。栽培期間中は無農薬、無消毒で育てており、糖度や栄養価も高く、皮ごと食べられるという。「忍者ばな菜」と命名し、販売すると評判を呼んだ。

 また、ジュースやパウンドケーキ、葉を使った茶葉や和紙、草木染めなど、「バナナの全てを輝かせたい」と利用の幅を広げていった。更に地元の伊賀白鳳高校の生徒にはグリーンバナナによるレシピを考案してもらい、あけぼの学園高校では生徒たちがバナナの葉から抽出した成分を配合した美容クリームを開発、販売している。

 今年も夏の本格的な収穫に向けて準備を始めるという佳苗さんは「伊賀の自然と食を守り、子どもたちの健康につながる継続的な農業をしていきたい」と話した。

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