【取材に応じる中川さん】

 「社会福祉協議会(社協)」と聞いて、その具体的な役割をすぐに思い浮かべられる人はどれほどいるでしょうか?

 福祉に関心がある人にはなじみのある言葉かもしれませんが、多くの人にとっては「何をしている団体なのか分からない」というのが正直なところでしょう。しかし、私たちの暮らしのすぐそばで、社協は誰かの人生を支えています。

名張市総合福祉センター「ふれあい」

 名張市社協の生活支援係は、生活に困難を抱えた人、生きづらさを抱えた人、社会とつながりにくい人たちを支える最前線の現場です。今回は、その現場で働く中川久美子さん(49)のストーリーを通して、社協の仕事の本質に迫ります。

 近鉄名張駅から徒歩約7分の所にある、名張市総合福祉センター「ふれあい」の2階。ガラス張りの建物の中にある名張市社協の事務所では、中川さんが真剣な表情で電話をかけていました。

メモを取りながら電話をかける

 大阪府堺市出身の中川さんは、大学法学部を卒業後、食品会社で営業職としてキャリアをスタート。その後、結婚を機に金融機関に転職し、約7年間働きました。そんな彼女が福祉の世界に飛び込むことになったきっかけは、ある言葉でした。

 「保育とは福祉であり、親の自己実現にも寄与するもの」

 子どもが通っていた保育園の園長先生が、園の行事の際に述べたこのひと言。子どもの心身の健全な発達、成長を目指すだけではなく、その周りの人の幸せをも目指すという考え方が、中川さんの価値観を大きく変えました。

 それまで営業職として数字を追い求め、福祉とは縁がないと思っていた彼女でしたが、「人々の生活をより良くする仕事がしたい」と考え続けていた自分に気付きます。そう、福祉の仕事は決して遠い世界のものではなかったのです。その保育園を運営していたのが、名張市社協でした。

 最初は臨時職員として事務補助の仕事をしていましたが、3年目から正規職員となり、「なばり暮らしあんしんセンター」(生活支援係)に配属されました。

朝の打ち合わせ風景

 このセンターでは、困難を抱えた人々の生活を支えるため、相談員12人、事務員2人、社会経験豊富な嘱託職員数人のスタッフが次のような支援を行っています。

① 生活困窮者等支援

・自立相談支援(就職や住まい、家計など暮らしの立て直し)

・就労準備支援(働くための基礎作り)

・家計改善支援(家計の見直し)

・無料職業紹介所の運営

・生活福祉資金貸付(経済的自立や生活意欲促進のための貸付支援)

② 権利擁護支援(判断能力に不安がある人への支援)

・日常生活自立支援(認知症や障がいのある人の金銭管理など)

・法人後見(社協が財産管理や契約などの代理を行う)

車で訪問先へ向かう

 中川さんは、最初は法人後見と日常生活自立支援業務を担当し、2017年には社会福祉士の資格を取得。3年前からは、生活困窮者の支援も併せて担っています。

「想像以上にやりがいがあり、自分が求めていたものにぴったり当てはまった」

 そう笑顔で語る中川さん。しかし、その仕事は決して簡単なものではありません。

 毎朝の業務は、日常生活自立支援事業の支援対象者の金銭管理の準備から始まります。病院への支払い、生活費の出金、通帳の管理……対象者は約70人。法人後見を担うケースも別にあり、その責任は重大です。

 それが終わると、生活困窮者支援の打合せを行い、相談者の面談、自宅訪問、市役所への同行などが続きます。新規の相談は月に15件から20件ほど。突発的な相談も少なくありませんが、断ることはなく、まずは全てを受け止めます。課題が解決するまで関わるため、何年もかけて寄り添い支援を行うことも珍しくはありません。

訪問先での面談

 「食べ物がない」「電気が止まりそう」「住む場所がない」――。こうした切迫した相談に対し、中川さんたちは生活全体を見直し、根本的な解決策を模索します。1人(世帯)の相談者の抱える問題は、1つではありません。

 例えば多額の借金を抱え、家の中が荒れ果て、家族の介護も必要で、仕事にも行けない状態であった場合、仕事探しの支援だけではなく生活全体を支援します。仕事、住まい、家族関係、借金、生活習慣……。全てをひっくるめて、より良い支援策を考えるのです。

 中川さんは、ある女性のケースが印象に残っているといいます。

市役所で打ち合わせをする中川さん(右から2人目)

 40代のAさんは大都市で飲食業に従事していましたが、父親の介護のため地元・名張に戻りました。しかし、慣れない製造業の仕事に適応できず、精神的に追い詰められ、無職に。多重債務も抱え、生活が立ち行かなくなりました。

 そんな彼女を救ったのが、市の地域包括支援センターと、なばり暮らしあんしんセンター、父親のケアマネジャー(名張市社協)の連携でした。弁護士とともに債務整理を進め、一家全体の状況改善を進めながら、Aさんが得意とする分野の仕事を探し、就職を支援。その結果、Aさんは自分に合った職場を見つけ、1年以上安定して働けるようになりました。

 後日、Aさんが就職した企業の社長からこんな言葉がありました。

 「彼女は本当に頑張ってくれています。採用してよかった」

 中川さんはこの言葉を聞き、支援者としてやりがいや喜び、そして改めて責任の大きさを感じたそうです。

名張市社協の事務所での面談

 「支援の本質は、その人に『やってあげる』ことではなく、その人自身の力を引き出すこと。目がふと輝く瞬間があるんです。その輝きを見逃さずに、希望へとつなげるのが私たちの役割です」

 社会の中で、誰もがふとしたきっかけで生活に困ることがあります。長引く不況、転職などきっかけとした挫折、介護離職――。その理由はさまざまです。

 しかし、名張市社協のネットワークを生かし、市役所や医療・福祉、地域住民、企業などを巻きこんでチームで寄り添い、伴走することで、困難を抱えた人や世帯を支えることができます。

 人々の生活や人生を社会的に支える、その最前線で活躍できる現場が、名張市社協にはあります。

(左から)的塲さん、中川さん、野木さん

 生活支援係とは異なる役割を担う、地域福祉係の2人にも話を聞きました。

 「『誰一人取り残さない、孤独・孤立のない地域社会の実現』を目指し、地域の方やボランティアなど多くの市民の理解と協力を得ながら、『こんな居場所があったらいいな』『こんなことをやってみたいな』という皆さまの声をカタチにするのが私たちの役割です」

 そう語るのは、野木千恵子(48)さん。彼女は「生活支援コーディネーター」として、少子高齢化や一人暮らし世帯の増加など、地域のさまざまな福祉課題を行政と共有しながら、「暮らす人」と「支援する人やサービス」をつなぐ調整役としての役割を果たしています。

「以前に住民の方から、『食事づくりに困っている一人暮らし高齢者の方がいて、配食ボランティア活動をやってみたいが、住んでいる地域で活動がない。一から始めるにはどうしたらよいか』と相談を受けました。地域でニーズがあるのか、チーム体制をどのように作っていくのかなど、約半年間にわたって話し合いをする中で、いろんな思いを受け止めながらコーディネートをしました」

 「相談してよかった」。その言葉と、握りしめてくれた手の温かさが、この仕事のやりがいにつながるといいます。

仕事について話す野木さん

 次に、ある一日の仕事の流れを的塲栞那さん(29)に聞きました。

 「午前中は民生委員の会合で地域の課題を共有し、午後は子育てサロンの運営支援。夕方には、次の福祉イベントの打ち合わせをすることもあります」

 毎日異なる現場に出向き、異なる人と向き合い、課題を解決していきます。

 「孤独を感じる人の居場所づくりや、特定の支援が必要な人へのサービス紹介など、『なばり暮らしあんしんセンター』との連携も欠かせません。お互いの強みを活かして、地域全体で支援を進めています」と、明るい笑顔で話します。

 また、的塲さんはボランティアコーディネーターとしても活躍しています。ボランティア参加へのきっかけづくりや、福祉教育を通じて次世代の子どもたちが福祉の心を育む機会をつくっています。

談笑する(左から)的塲さん、中川さん、野木さん

 地域福祉係は、災害ボランティアセンターの運営も担います。名張市で災害が起きた時に復旧支援と生活再建のためのボランティア派遣を行い、平常時は災害に備えた運営訓練やボランティアの育成を行い、災害時に円滑に支援を受け入れるための力を育むことに取り組んでいます。

 2024年の能登半島地震では、的塲さんは発災から2か月後、野木さんは発災から6か月後に、石川県輪島市へ災害ボランティアセンター支援として現地へ派遣されました。

 「大災害の復興支援で異なる時期での現地派遣を経験し、感じたことを共有することにより、名張市で災害ボランティアセンターを立ち上げる時にどう動くべきか、改めて見つめ直すことができました」と野木さんは振り返ります。

 名張市社協では、市民が安心して暮らせる地域社会の実現を目指して日々、奔走しています。

名張市社協の窓口

話を聞いた人

【生活支援係】
中川久美子さん 係長 社会福祉士

【地域福祉係】
野木千恵子さん 係長 社会福祉士 生活支援コーディネーター
的塲栞那さん 社会福祉士 ボランティアコーディネーター

(2025年2月取材 編集チーム 須田雄介)


社会福祉法人 名張市社会福祉協議会

勤務地

名張市丸之内79番地(名張市総合福祉センターふれあい2F)

募集職種

(1)相談員(なばり暮らしあんしんセンター)

雇用形態正規職員
仕事内容様々な生活課題を抱える方の相談対応や支援業務全般
給与月給173,000円~ ※諸手当含む・経験を考慮して優遇
時間8:30~17:15 ※1か月単位の変形労働時間制
休日シフト制(土日祝、年末年始) ※年間124日
資格要普通自動車免許、未経験可
待遇昇給あり、賞与年2回、有給休暇、介護・看護休暇、リフレッシュ休暇、各種社保完備、試用期間6ヵ月
その他★別業種からの転職者も多数活躍中
★あなたの人生経験を活かせるお仕事です

(2)事務スタッフ(地域福祉係)

雇用形態臨時職員
仕事内容総合窓口の受付や地域担当業務、福祉団体の事務など
給与時給1,040円
時間8:30~17:15 ※1か月単位の変形労働時間制
休日シフト制(土日祝、年末年始) ※年間124日
資格要普通自動車免許、未経験可
待遇昇給あり、賞与年2回、有給休暇、介護・看護休暇、リフレッシュ休暇、各種社保完備
その他★別業種からの転職者も多数活躍中
★あなたの人生経験を活かせるお仕事です

(3)ケアマネジャー(介護支援専門員)

雇用形態①正規職員 ②臨時職員
仕事内容介護保険をはじめ、介護全般に係る相談援助業務やケアプラン作成業務等をしていただきます。
給与①月給214,500円~ ※諸手当含む・経験を考慮して優遇
②時給1,320円~1,620円 ※能力・経験を考慮して優遇
時間8:30~17:30 ※1か月単位の変形労働時間制
休日シフト制(土日祝、年末年始) ※年間124日
資格要介護支援専門員、要普通自動車免許、未経験可
待遇昇給あり、賞与年2回、介護・看護休暇あり、実績・緊急時対応手当、リフレッシュ休暇、試用期間6ヵ月(①のみ)、制服貸与、有給休暇
その他★ケアマネ経験のない方もOK!丁寧に指導します
★②は正規職員登用制度あり

(4)看護師

雇用形態臨時職員
仕事内容通所介護事業所「ふれあい」における機能訓練を含む医療業務全般
給与正看護師 時給1,550円~
准看護師 時給1,320円~
時間基本シフト8:00~17:00 (夜勤なし) ※1か月単位の変形労働時間制
休日シフト制(日曜、年末年始) ※年間124日
資格要看護師免許、要普通自動車免許
待遇介護・看護休暇あり、制服貸与
その他★夜勤はありません
★正職員登用制度あり
★転職者歓迎

募集期間

2025/3/4~2025/5/4

採用予定人数

(1)(2)(3)(4)共に1名

応募方法

下記の問い合わせフォームよりお問合せください。
お電話からのお問合せも承ります TEL:0595-41-0780

その他

よろしければこちらもご覧ください。
名張市社会福祉協議会HP https://www.nabarishakyo.jp/


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