【名張市の乗馬クラブを訪れた(手前から)うめのさん、くるみさん、八木さん、充代さん(提供写真)】
「自然の中に答え」
「私たちが伊賀へ移住した理由も、これからやりたいことの答えも、きっとこの自然の中にある」。昨秋、娘2人と母、祖母の4世代5人で愛知県名古屋市から三重県伊賀市種生へ移住した八木かな子さん(40)。高齢化が進む山間部の集落を拠点に、自身も痛感してきた「心と体が健康である喜び」を多くの人に伝えるべく、古民家を改修して人々が集える場所づくりに取り組んでいる。
名古屋市内で施術院を営み、ヘルスコンサルタントや環境保全事業などに携わる合同会社を経営する八木さんは、現在も週2日は名古屋に赴く。幼いころから目や鼻、耳などの病気に悩まされ続けてきたが、自身の心身の健康や子どもたちを健やかに育てられる環境を求め、4年ほど前から移住を考えてきた。
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移住先を探す中で、伊賀地域に住む友人から誘いを受けて物件を見学し、種生と東隣の老川にある2軒の古民家にたどり着いた。リフォームを経て新たな住まいとなったのは、川上川に面した種生の築約50年の2階建て家屋で、長女くるみさん(8)、次女うめのさん(6)も雰囲気や周囲の環境を気に入った。
もう1軒の老川の古民家は築約70年で、仕事場にする平屋の離れを先行して改修し、地元の人たちにお披露目を済ませた。現在は2階建ての母屋を、住民もゲストも多目的に使える「みんなの居場所」に改修するため、クラウドファンディングで資金を募っている。
移住直前の昨夏、伊賀地域でも貴重な木造校舎が残る「博要の丘」で夏祭りを催し、農業体験や食育セミナーを開催するなど、地域外から訪れる人を増やすイベントを企画し、今年2月からは地元住民向けに体操教室も始めた。「今まで無かったことをやって地域を盛り上げたい。少しずつでも皆さんの困りごとや希望を伺い、自分のできることで健康増進につなげられたら」と展望を話す。
乗馬や野菜作りに挑戦
自宅にはあえてテレビやWi‐Fi環境を備えていない。八木さんは娘たちと母充代さん(67)とともに乗馬を始め、畑では獣害の現実に直面しながら野菜作りに奮闘。祖母の岡本八重子さん(90)は「散歩が日課になり、前より健脚になった」と喜び、5人それぞれに伊賀での新たな暮らしを満喫している。
補助金申請などで移住前から協力関係を築いてきた博要住民自治協議会とは、地域活性のために協業する協定を結び、施設の相互利用などで連携を深めていくという。「子育て世代にとっても、地域の皆さんとともに子どもを育てていけるメリットがある。地域の自然や環境を守りながら、皆が安心して住めるまちづくりを手伝えたら」と笑顔で語った。
八木さんはインスタグラム(@team.butterfly.effect)で情報を発信中。