【想定訓練に励む的場さん(左)ら=伊賀市で】

有志チーム「BRITZ」

 「日々進化していく資機材や技術を現場に採り入れたい」。世界標準のロープを使用して救助技術を磨く、現役消防士の有志チーム「BRITZ(ブリッツ)」は、三重県伊賀地域や近隣市町の20代から40代の約20人が日程を合わせて集まり、5人1組の想定訓練やトレーニングに励んでいる。

 2018年、伊賀市消防本部の的場百弘さん(47)、中村元気さん(32)と松阪市、奈良市の消防士計4人で発足。「先輩方から教わってきた大切な技術をもっと深く知りたい」と、高所作業やロープレスキューの講習が受けられる大阪府の専門家のもとへ半年間通い、ロープアクセスの基礎を学んだ。

 同チームは、国内外で開かれるロープレスキューの大会に出場。競技では、現場で主に使われているものより1・5ミリ細い直径11ミリの、強度に優れた「セミスタティックロープ」を使い、メイン・バックアップの2本のロープで体を支えながら、丁寧かつ迅速に要救助者を搬送し、自らの安全も守ることを重要視している。

 ロープやカラビナ、ハーネス、落下の衝撃を緩和するショックアブソーバーなど、資機材はほぼ自前。ロープ自体の重量は50メートルで4キロ弱あり、全てを装備すると相当な負荷がかかるが、高所でのロープアクセスが容易で安全性に優れた資機材を選び、それぞれが休日などを利用して体づくりにも取り組む。

 伊賀市消防本部の施設で12月に行った訓練では、最初に想定を伝えられたリーダー役が4人のメンバーに役割やルートを指示。担架に乗せた要救助者役を地上からロープで10メートルほど引き揚げ、数十キロある自分たちの荷物や資機材も運びながら、再び地上に降ろす手順を、声を掛け合い迅速に進めていった。

 昨年4月にメンバーとなった名張市消防本部の濱田亮さん(31)は「先輩方に分かりやすく教えて頂きながら、こつこつ頑張っている。いずれはプレーヤーとして大会で優勝したい」と目標を口にする。今春予定している同本部の資機材更新に向け、セミスタティックロープの導入を提案してきた濱田さんは「一つでも所属先の業務に還元できて良かった」と話した。

 訓練は勤務明けになったり、車で1時間以上かけて向かったりすることも少なくない。メンバーには子育て世代も多く、3人は「職場や家族の協力無しにはできない」と口をそろえる。帰りには「お父さんの顔」に戻っているそうだ。

 「救助の現場に100%の安全は無い。昨年の能登半島地震など、自然災害も頻発する中、消防士として少しでもスキルアップしたい」。チーム最年長で指導的立場の的場さんは「古い方法、古い道具で実施しているケースは多く、組織的に新しいものを採り入れていくのは簡単ではないが、新規格が世界の共通認識になりつつある」と話していた。

今年も国際大会へ

 同チームは昨秋、台湾で開かれた国際大会に和歌山県チームと合同で出場し、優勝した実績がある。次は2月16日から香川県で開かれる国際大会「GRIMP JAPAN」に臨む予定で、有志や自治体消防などで結成された国内外トップクラスの24チームが出場する。

台湾での大会で表彰されたメンバー(提供写真)
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