能登半島地震から1年が過ぎた。各地で地震や水害などの災害が頻発する中、食物アレルギーがある子どもやその保護者にとって、被災時に安全な食事を確保することは大きな課題となる。
三重県名張市百合が丘に住む会社員の女性(35)には、小麦や卵、乳製品のアレルギーがある長男(4)がいる。家族の中で食物アレルギーがあるのは長男だけで、家庭での料理や外食時の店選びなど、女性は日頃から気を付けて暮らしている。
これまで実際の災害に遭った経験はないものの、もしもの時に備えて食物アレルギー対応の缶詰やレトルトのおかゆ、カレー、ハンバーグなど数日分を食品庫に入れて備蓄している。しかし、どうしても避難しなければならなくなった時を思うと「水はたくさん備蓄しているが、食品の備蓄は少ない。安心して食べられるものを市にも用意しておいてほしい」と話す。
名張市は備えてる?
市危機管理室によると、同市では国の指針と想定される最大の避難者数の予測に沿って、アルファ米の長期保存食約1万食分を備蓄しており、アレルギー物質28品目不使用の製品を採用している。乳児用には、通常の液体ミルクの他にアレルギー物質が使われていない母乳代替食品を約10リットル分備蓄している。
アレルギーに対応した食品の市の備蓄状況について、同室の担当者は「十分な量が行き渡るかは分からない。行政だけではまかなえないので、アレルギーに限らず、それぞれに合った食品を十分に備えて頂きたい」と呼び掛けた。
市の備蓄状況について知った女性は「1万食は少ないと感じる。市全域が被災すると想定した上で再検討して頂きたい」と話した。
アレルギーポータル
日本アレルギー学会が運営するインターネットサイト「アレルギーポータル」(https://allergyportal.jp/)には、アレルギーがある人向けに災害時の対応や平時の備えをまとめたページがある。食物アレルギーの場合は、アレルギー対応食品を少なくとも2週間分用意すること▼症状が現れた時の薬を持ち出せるよう保管を工夫すること▼子どもでも周囲にアレルギーがあることを伝えられるビブスを用意することなどが紹介されている。