親水公園整備へ方針転換
三重県名張市に存在しないものに「道の駅」がある。名張川の河川改修に合わせた国土交通省の「名張かわまちづくり」で2024年8月、同市黒田に芝生広場や駐車場、トイレなどを備えた「地域振興拠点」を整備する計画が追加されたが、この場所を巡っては数年前に「道の駅」の整備構想が頓挫していた。なぜ実現しなかったのか。
道の駅は、市町村などが整備し国交省が登録する施設。休憩と情報発信、地域連携の機能を持ち、24時間利用可能なトイレや駐車場を備え、近年は観光の目的地化もしている。2024年8月現在で全国に1221か所あり、県内は18か所、伊賀地域は伊賀市川合の「あやま」と同市柘植町の「いが」の2か所がある。
名張市での道の駅の計画は、黒田大橋と黒田橋の間(約250メートル)にあり国道165号にもつながる宇陀川左岸の土地を想定し、2020年度と21年度に市などが検討を進めていた。YOUが入手した、関係者向けに市が作成した説明資料には、道の駅を検討していた当時の図面があり、トイレや駐車場の他にレストランや物販施設などの建物配置が示されている。
市の財政難で
市道路河川室によると、市は当時、財政状況から飲食や物販などの建物を併設した施設の建設を市主体で進めることは困難と判断。協議会を構成する名張商工会議所からの提案を受けて再検討したが、収益が不透明なことや道の駅の運営に意欲的な事業者が商議所会員にいなかったことなどから、計画は頓挫した。市の担当者は「商工会議所からは『費用を負担してでも協力する』という話を受けたが、結局は良いアイデアや策が見出せず、そのまま終わってしまった」と話す。
その後、市は県に働き掛けたり、民間事業者が公園内に飲食店などを設置して再整備する公募設置管理制度「パークPFI」の導入に向けて大手コーヒーチェーンや大手アウトドア用品店などに声を掛けたりと、別の方策を探ったが、明確なビジョンを示せなかったことや洪水のリスク、時間的制約などから、これも実現しなかったという。
その後、名張駅周辺など旧市街地を対象とする同省の都市再整備計画事業の一部としてこの場所を親水公園にする案が浮上し、現在に至る。多目的広場や情報発信施設、駐車場、トイレ、東屋などを設ける予定で、25年度の事業化を目指して手続きを進めている。同室の担当者は「親水空間を活用してさまざまなイベントを開き、まちなかの回遊性を増やしていけたら。やなせ宿と一体となって利活用し、発展につなげていきたい」と話した。
2024年12月7日付881号17面から