【修復を終え楼門内に戻された多聞天立像=伊賀市島ヶ原で】

 経年劣化により昨年4月から修復作業が進められてきた、三重県伊賀市島ヶ原の観菩提寺(菅生和光住職)の県指定文化財「木造多聞天立像」が12月20日、修復を終えて同寺に戻された。

 市教育委員会文化財課などによると、同寺正月堂の楼門には多聞天の他に「持国天」「増長天」「広目天」の四天王が収められており、中でもカヤの一木造の多聞天は、最も古い約1000年前の平安前期制作と伝わる。像の高さは162・5センチ、踏んでいる邪鬼を含めた高さは175・1センチで、右手を腰に当て、左手には戟(げき)を携えている。

 直近では約100年前に修復が行われたとみられ、今回は愛知仏像修復工房(愛知県尾張旭市)で解体や清掃、欠損部分の修復などが行われた。風化した表面にアクリル樹脂を含浸させた他、自立しづらい状態になっていたため、邪鬼の下部に合成樹脂の部材を敷いて安定させた。欠損していた頭部の焔髪(えんぱつ)や邪鬼の右耳は色を合わせて補作した。

 修復を担当した同工房の横川耕介さんによれば、全体的に部品の欠損は少なかったという。菅生住職は「2年間不在だったので、お戻りになり、ほっとしている」と語り、楼門に戻された多聞天を眺めていた。

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