三重県伊賀地域では珍しい温州ミカンの栽培をしている名張市新田の農家、平野昌洋さん(63)。今年は糖度・酸度ともにバランスが良く、反響も上々だ。
栽培を始めたのは父親の昌巳さん(88)。ビニールハウスでネギを育てていた昌巳さんが「ネギを止めて、次は何をしよう」と着手したのがシャインマスカットと温州ミカンだった。
当時、教員だった平野さんは栽培に関わっていなかったが、4年ほど前、父と自身のイニシャル、更には美旗地区の「M」から「みはたM’sファーム」と命名し、手伝いを始めた。
退職した3年前、県立農業大学校1年課程に入学し、果樹専攻を受講。受講後は本格的に農業に従事し、米とミカン、ブドウの複合経営に乗り出した。
現在、温州ミカンは間口6メートル、奥行き30メートルのビニールハウス11棟で「宮川早生」を中心に120本を栽培している。出荷は4年前に始めたそうだが、あまり良い形の果実ができず、酸味も強かったという。ミカンの木と木の間にブドウを植えたり、牛ふん堆肥を投入してみたりと、試行錯誤を繰り返したが、良い感じに実らず、苦労が続いた。
植え方や施肥を試行錯誤 年末まで収穫続く
昨年の台風ではハウスも破れてしまい、今年はその破れたハウスの分を路地栽培にした。「意外と路地で育てたほうの出来が良いかも」と笑う平野さん。
10月半ば、ようやく色付いてきたミカンは形も良く、内皮も薄くなってきた。糖度も13度あるという。年末まで収穫予定で、親子で袋詰めし、11月から地元スーパーの地場産コーナーなどで販売している。
平野さんは「『伊賀では温州ミカンはできない』と言われ続けていたが、良いミカンができた。今年は豊作かもしれない」と喜んでいた。
平野さんは作業の様子をインスタグラム(@mihata_ms)で毎日発信している。
2024年11月23日付880号2面から