【「古舘プロジェクト」の代表取締役社長に就任した心之介。さん(本人提供)】

 三重県伊賀市出身の占い師タレント「心之介。」(本名・高森慎司)さん(39)が、芸能プロダクション「古舘プロジェクト」(本社・東京都新宿区)の代表取締役社長に就任した。路上活動で約7万人の人生に触れるなか、経営者の道に進む意思を固めていった。「誰もが挑戦権を持って、平等に輝ける世の中を作りたい」と抱負を語る。

 将来の夢を聞かれると、「社長と芸能人」と答える子どもだった。市立青山中を卒業し県立名張西高(現・名張青峰高)に進んでからは、名張駅地下通路に座ってアコースティックギターをかき鳴らし歌った。

 ミュージシャンを夢見て東京の創価大学に進学し、各地で路上ライブを展開。上手く稼げる飲み屋街の一角を見つけ、「あなたのために歌を作ります」と呼び掛けて立ち止まった人の話を即興ソングにして贈り、投げ銭を得た。

 その後、所属バンドの解散を機にお笑いサークルへ。全国大学生お笑い選手権優勝や、R‐1グランプリ準々決勝進出を経験した。

 卒業後は芸能事務所に就職したが、自己表現の道を諦めきれず退社。学生時代に知り合った芸人の影響もあり、相手の手相を見たり話を聞いたりして即興詩を筆で色紙にしたためる「手相詩人」として全国を旅した。

手相詩人の活動を始めたころの心之介。さん(2010年のYOUより)

 旅先で人々の悩みに耳を傾ける中、東京と地方の情報や挑戦機会の格差から、夢を諦めざるを得なかった人の多さを知った。「東京に行かなくても夢がかなえられるチャンスがあれば」と感じ、社会の構造的な問題に考えを巡らせたという。

 旅の中で中国の経済都市・深圳を訪れた2018年、現地の住民の間でインターネットのライブ配信が普及しているのを目の当たりにした。「日本の問題も解決できる」と確信し、帰国後の19年にライブ配信者をサポートする事務所「ライバージャパン」を立ち上げた。

事務所経営、手腕を発揮

 路上活動から本格的に経営者の道に進んだ背景にあったのは、大学4年の時に他界した母親の「周りの人たちを笑顔に、幸せにしてあげられる強い人になってほしい」という言葉だった。「人を助けるには、自分自身が影響力を持たないといけない」と考え、新事業の拡大にまい進した。

 20年からのコロナ禍で自宅での時間を過ごす人が増えたのを追い風に、ライバージャパンは設立から2年ほどで業界最大規模まで成長。現在は約1万3千人の配信者が所属している。

 更に今年9月、デジタルに強い経営手腕と高い志を買われ、19年からタレントとして所属していた古舘プロジェクトで社長に抜擢された。古舘プロジェクトはフリーアナウンサーの古舘伊知郎さんをはじめ多くのタレントや放送作家が所属する芸能事務所だが、近年はテレビ業界の縮小への対応が課題となっていた。今後について、「インターネットで地域の誰もが発信力を持ち、更にその地域の経済が回る仕組みを、自分が先頭に立って作っていきたい」と語った。

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