【おがくずを集め、フレコンバッグに詰め込む集じん装置=名張市大屋戸で】

梅澤木材工芸社

 今年創業100年目、さまざまな木製品を製造している三重県名張市大屋戸の梅澤木材工芸社。国産ヒノキを使ったキッチン・バス用品を中心に機能性と耐久性にこだわった製品を作り続けている。最近は、カフェや料理系ユーチューバーなどからオリジナルロゴを焼き付けたOEM(相手先ブランドでの製造)商品の受注が急増しており、ウェブを通して同社の知名度も上がっているという。

 4代目社長の梅澤尚史さん(48)は「創業以来積み上げた製造技術と全国にある協力会社のおかげで、どんな注文にも対応できるのが当社の強み」と話す。

 同社のSDGsの取り組みの1番目は、生産工程で出てくるおがくずの革新的な処理法だ。これはSDGsの開発目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」だ。

 30年ほど前までは、かんなやのこぎりのくずは、工場裏にあった焼却場に投入して焼却処分していた。しかしこの方法は煙やCO2排出の面でも好ましくないことから、当初はおがくずを集めて近隣の牛舎の「敷料」として使ってもらい、最終的には畑の肥料となっていた。

 5年前にはSDGsの観点から、一歩踏み込んだ取り組みを始めた。滋賀県栗東市にある日本中央競馬会のサラブレッドの訓練施設「栗東トレーニングセンター」で使う馬の敷料として出荷。最終的にはバイオマス発電の材料として有効活用されているという。

 敷料は馬舎の床などに敷かれ、柔らかくてクッション性があるため馬の足を痛めにくい上に、ふんと一緒に集めて最終的にバイオマス発電に使われている。

 同社では5年前に大規模な設備投資をして、毎日排出されるおがくずを集じんし、約10袋のフレコンバッグ(1立法メートルの容量)に詰め込むための集じん装置を導入した。現在、奈良県天理市の業者がこのバッグを毎日集荷し、栗東の訓練施設へ届けている。「焼却処分の方がコスト面で断然メリットがあり、製材所などでは今もこの方法が一般的。しかし環境面やバイオマス発電への貢献などから、持続可能な取り組みと考えている」と話す梅澤社長。

「おにぎりを作る木型」を手にする梅澤社長

 SDGsの2番目の取り組みは、限りある資源の有効活用で、これは開発目標12「つくる責任つかう責任」に当たる。最終工程で出る端材を使い、おしゃれな小型まな板、キャラクター入りのコースター、グラタン皿の敷板など、要望に応じて小ロットから受注している。また、本来なら捨てられる建材用の残材を買い取り、製品化している。

 5年ほど前からは、高級まな板の購入者に「まな板削りサービス券」を付けている。数年使いこなしたまな板をかんなで削り直し、新品同様によみがえらせるサービスで、無償で行っている。「汚れたら捨てるのでなく、削ってもう1クール使って頂くことでごみの削減にもつながり、節約志向のユーザーから喜ばれている。これも持続可能な取り組みの一環」

 同社の従業員の約6割は女性だ。「残った材料を捨てないでどう生かすか? 全てにおいて『もったいない』という考え方は、女性の方がしっかり持っている」と話す梅澤社長は「永く続いてきた会社だが、これからも永続的に生き残るためにはSDGsを基本に、地球環境を考えたものづくりをより徹底したい」と締めくくった。

 問い合わせは同社(0595・63・0082)まで。

2024年10月12日付877号22面から

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