耐熱塗料の分野で国内トップシェアを誇る三重県名張市蔵持町芝出のオキツモ株式会社(山中重治社長)。同社の新領域開発部グループリーダー坪井大輔さん(37)は「主力の耐熱塗料そのものの特性が、設備や製品などの劣化を防ぎ、長持ちさせることでSDGsに貢献している」と説明する。
SDGsの目標12番は「つくる責任つかう責任」。同社の耐熱塗料は、工場のプラント配管や煙突、生産設備に多く使われており、設備の寿命を延ばすことに貢献している。
また、暖房機や自動車、バイクのマフラーには70年ほど前から使用されている。更に電子レンジやガス器具などの調理機器にも使われており、素材の保護や外観を保つという「耐熱性」は当然の品質として、そこに「断熱」「放熱」「潤滑」などの付加価値を付けて提供している。
新市場のマーケット戦略を担当する新領域開発部では、「アウトドアの流行」「モノを大切にするSDGsの考え方」「オキツモの耐熱技術」に着目し、新しい需要を生み出そうと、2年前に「耐熱リメイクスプレー」を開発した。
まきを燃やして使用するたき火台やバーベキューコンロは使ううちに汚れが目立ち、さびることがある。そこでサンドペーパーで表面を磨き、このスプレーを吹き付けると、「新品同様によみがえる」そうだ。
同社では、大手キャンプ用品メーカーと共同開発した耐熱リメイクスプレーも今春に発売している。「キャンプは今や、ブームからカルチャーとして根付きつつあり、今後の需要拡大に期待している」
坪井さんは現在、働き方改革の一環として、社内コミュニケーションを良くし、働きがいの向上につなげるための「魅力向上委員会」のメンバーだ。同委員会は、従業員の目線で会社の課題や職場の問題点などを見つけ、緊急度の高いものから経営提言するというもので、各部門の社員で構成されている。この取り組みはSDGsの目標8番(働きがいも経済成長も)に通じる。
昨年度、「営業担当者は自信を持ってオキツモの商品を提案できていないのではないか」との問題提起から、解決策として営業の主任職を対象に月1回の技術研修を始めた。
受講者は「さまざまな種類の耐熱塗料の塗り方を実習した。塗り方によって商品の特性に違いが出ることを肌感覚で知ることができ、今後お客さまに自信をもって提案することができる」と話す。
オンリーワンのオキツモの商品力をユーザーに的確に伝えるために、同社では今後、ウェブを活用したプロモーションにも力を入れていく方針だ。
2024年9月28日付876号7面から