三重県伊賀市と芭蕉翁顕彰会は10月7日、芭蕉翁献詠俳句と絵手紙の特選・入選作品を発表した。特選は71点で、作者は松尾芭蕉の命日に当たる12日に市内で開かれる「第78回芭蕉祭」の式典会場で表彰される。
同顕彰会によると、今年度の応募総数は3万7091点で、昨年度より1720点増えた。部門別では、一般の部7486句(前年度比223句減)▼テーマの部1884句(同271句増)▼児童生徒の部2万3278句(同485句減)▼英語の部2443句(同1670句増)▼連句155巻(同23巻増)▼絵手紙842点(同179点減)だった。
英語の部の応募数は募集を始めた1989年以降最多で、国の数、国内からの投句数も最多に。学校全体で意欲的に創作活動に取り組んだ「三重県知事賞」には、伊賀市の上野西小と柘植中が選ばれ、市内の小学校12校から1003点の応募があった芭蕉祭のポスター原画は、伊賀市立久米小6年の土田あいみさんの作品が最優秀賞に選ばれた。
ポスター原画の入賞・入選作品36点は、10月21日までハイトピア伊賀(上野丸之内)5階ギャラリー、11月1日から同12日までの平日に市役所本庁舎4階市民ミニギャラリーで、いずれも午前9時から午後5時まで展示される。見学自由。また、10月16日までは伊賀鉄道を走る「芭蕉祭俳句列車」(ピンク色の忍者列車)の車内にもプリントしたものを掲示する。
各部門の特選作品は次の通り(敬称略)。
〈一般の部〉
【稲畑廣太郎選】
それぞれの歩幅でつづく蟻の列(川崎市、下村修)
噴水の穂先のふれて星にじむ(岡山市、名木田純子)
【井上弘美選】
埋め立てる闇を揺さぶる牛蛙(世田谷区、野上卓)
銀の国と記す航路図夕立雲(島根県出雲市、下手泰子)
【井上康明選】
炎帝は伊賀連山の隙間より(岐阜県大垣市、度会さち子)
陶潜に子を責む詩あり秋の暮(東京都世田谷区、野上卓)
【小川軽舟選】
定位置に風鈴の音や親の家(大阪市、佐竹三佳)
うららかや母校は明日閉校す(伊賀市、中森里江)
【小澤實選】
次の旅我が伴せむあやめ草(東京都小平市、塚田見太)
少年の尻輝けり草相撲(奈良県桜井市、中佐代美)
【櫂未知子選】
新札の遅れつく島灼くるなり(千葉市、島木翠)
絹くぐる四ノ三の針燈涼し(伊賀市、坂石佳音)
【坂口緑志選】
真筆の涼し芭蕉の蛙の句(奈良市、山中智恵美)
蜘蛛の囲の摑みきれざる落暉かな(伊賀市、猪岡節夫)
【谷口智行選】
隧道を抜け初凪の浜街道(鈴鹿市、高尾のり子)
胴塚へ世古の片蔭拾ひ行く(四日市市、森田久枝)
【西村和子選】
避難所の一輪挿しに野水仙(津市、山本清稀人)
草花の丈をただよひ秋の蝶(神戸市、杉岡壱風)
【長谷川櫂選】
被災地を励し雲の峰旺ん(神戸市、小柴智子)
一眠りしただけなのに明易し(津市、白木ひろ海)
【星野椿選】
時雨忌や異郷に在れど伊賀生まれ(神奈川県藤沢市、中出隆義)
吊り橋をこわごわ渡る初音かな(長崎県佐世保市、相川正敏)
【堀本裕樹選】
大鷹におはやうと言ふ山暮し(富山市、小林森ん波)
クレヨンの線路延びゆく冬銀河(東京都世田谷区、松井明夫)
【正木ゆう子選】
セラヴィといへば泡吐く金魚かな(東京都世田谷区、野上卓)
母のごと吾をゆるさむ合歓の花(宮崎市、山野楓子)
【三村純也選】
帰省子の旨さうに食べ愛想なく(大阪市、香山直子)
熱燗や女将は今日も聞き上手(東京都世田谷区、石川昇)
【宮坂静生選】
かなかなや天かけて声鋼めく(亀山市、岡田良子)
秋光を杼に神御衣を織りにけり(伊勢市、西岡せつ子)
【宮田正和選】
白き胸光らせ燕翻る(滋賀県甲賀市、服部登紀子)
風に染む白紫陽花のひとところ(伊勢市、久世伸子)
〈テーマの部〉=テーマ「生」
【片山由美子選】
もうだれも住まぬ生家の雪卸す(札幌市、藤林正則)
風呂敷に生家の家紋土用干(東京都日野市、田村登代子)
〈英語の部〉
【河原地英武選・訳】
on a floating log
cormorant with his chin down—
so weary of war
厭戦や鵜は流木に顎下ろす
(Priscilla Lignori,USA)
thin ice
a gull stands
on one leg
うすらひに片足立ちの鷗かな
(Brad Bennett,USA)
〈児童生徒の部〉
【保育所(園)・幼稚園、小学1~3年=岡島千秋、西田ゆかり、松村咲子、森岡秀美、山村勝子共選】
おとうとのアイスはいつもとけている(伊賀市、中瀬城東保育園、安永侑矢)
しゃぼんだまなかよくよってくもみたい(伊賀市、友生保育園、福本彩希)
あまのがわなれるといいなしょうぼうし(伊賀市、白鳳幼稚園、岡村歩)
せみよりもいってきますをげんきよく(伊賀市、上野西小1年、西一莉)
じてんしゃをおりてびっくりせみのこえ(伊賀市、西柘植小1年、松井建橙)
ながぐつのなかからばったとびだした(伊賀市、西柘植小1年、湯川健生)
犬かきでちちからにげた川あそび(伊賀市、上野西小2年、田中稜都)
姉の手をそっとにぎって花火する(伊賀市、友生小2年、森健人)
いなごとぶママのくるまにはりついた(伊賀市、阿山小2年、中夏葉)
早送りみたいにすぎる夏休み(伊賀市、友生小3年、小澤夏実)
夏まつりダンスおどったはいせいでん(伊賀市、西柘植小3年、江川恵菜)
夏ツバメ子をまもるためパトロール(東京都江東区、扇橋小3年、石川日惟)
【小学4~6年=岡森競一、坂石佳音、服部登紀子、東構東子、福山良子共選】
森ぬける岩のかいだんつばきの実(伊賀市、上野東小4年、福田絢菜)
弟のねぐせににてるひがんばな(伊賀市、上野西小4年、福永莉依)
はるのかぜゆっくりひらくせかいちず(オーストラリア・メルボルン市、ハンティングデール小4年 たいら)
運転中父だけ似合うサングラス(伊賀市、上野西小5年、手島みらい)
息合わせ一・二ですすむカヤックだ(伊賀市、上野西小5年、中山薫)
射的する花火のあいまにもう一回(伊賀市、友生小5年、上田芽)
関西線青嶺のすそを一両車(伊賀市、柘植小6年、大橋由可)
「はだしのゲン」読み終えていく原爆忌(伊賀市、壬生野小6年、坂本燈麻)
虫すだく弓に松ヤニこすりつけ(倉敷市、万寿東小6年、田村英)
【中学=池本準一、佐々木経子、島井節、下村哲朗、中西紀歩共選】
せみしぐれ母の背を押す修行道(伊賀市、上野南中1年、川口慶悟)
青春の始まる合図ライラック(伊賀市、青山中1年、松居茜里)
最後までやりぬくテスト新樹光(福岡県古賀市、古賀東中1年、本田雅隆)
母の歯は蝦蛄の殻をも噛み砕く(伊賀市、緑ヶ丘中2年、福持智康)
遠雷に立ちこぎ急ぐ帰り道(伊賀市、柘植中2年、林美潤)
夏休み部活取り組む新チーム(伊賀市、青山中2年、落合颯愛)
千本の鳥居に映える雪化粧(東京都杉並区、井草中3年、井上悟)
たまごぱんつくるパパの背冬の朝(東京都杉並区、井草中3年、髙橋結芽子)
山粧う清水寺の舞台かな(福岡県芦屋町、芦屋中3年、岡本彩琉)
【高校=池本準一、佐々木経子、島井節、下村哲朗、中西紀歩共選】
蝉時雨明日退院と祖父の声(伊賀市、伊賀白鳳高1年、栗山奏來)
空梅雨や関数を解くペンの音(御浜町、紀南高2年、中西結愛)
書初の決意と共に帯を締め(愛知県安城市、安城高2年、壁谷天晟)
〈連句の部〉
【小川廣男、小池正博、西田青沙、森川敬三共選】
〈絵手紙の部〉
【森田満枝、福北辨選】
名張市、杉本由美子