狭き門を突破
「グレートミュージシャンになり、世界的な規模での活躍を目指したい」。米国ボストンにある、ジャズやロックなど現代音楽の名門・バークリー音楽大学に9月から2年間留学する三重県名張市桔梗が丘4番町の阿嘉充さん(21)。卒業した専門学校の奨学金で2年間の学費が全額免除されるもので、プロギタリストになる夢へ向かって一歩を踏み出した。
父の努さん(54)が洋楽好きなこともあり、家庭では常に音楽が流れている環境だった。中学1年の時、米国出身の世界的ミュージシャン、レニー・クラヴィッツの「自由への疾走」を聴いたのをきっかけに、ギターに心酔していった。
技術を上げ、どんなジャンルの音楽でも弾けるようになったが、ブルースやジャズなど米国ルーツの楽曲が好きだと気付き、「本場のバークリー音大で学びたい」という気持ちを強めた。
松阪高校を卒業後は、プロになるための道筋を自身で立て、苦手なミュージックビデオ制作などの作業を1年間学んだ。更にバークリー音楽大への編入、留学を視野に、同大とパートナーシップ契約を結んでいる神戸市の「甲陽音楽&ダンス専門学校」のバークリー留学コースに進学した。
単位を取り卒業した今春、用意された楽曲やアドリブ演奏、聴音などを総合的に評価される編入試験に挑戦。学費が全額免除される「浮舟奨学金」の対象者に選出され、留学が決まった。
2016年の設立以来、これまでに8人の若い人材を送り出している浮舟奨学金は、東京にもある同系列の専門学校の卒業生も含めて毎年1人だけが選ばれる狭き門。初めから狙っていたとはいえ、決定を受けて6月にあった授与式では感激して身が引き締まったという。
「楽しみと不安が入り混じる」と留学に向け、笑顔を見せる阿嘉さん。「バークリー音大を目指してきたので、2年間、みっちり学べるのはすごくうれしい」と目を輝かせている。
2024年8月31日付874号1面から