【曽爾高原をバックに思いを語る佐藤所長】

 「国立曽爾青少年自然の家」(奈良県曽爾村太郎路)に今春、元小学校教員の佐藤素子所長(63)が着任した。3月までは地元の秋田県内にある潟上市で教育長を務め、「教育現場、教育行政を経験したからこそできる仕事」と一念発起。単身赴任で三重県名張市に住み、縁ある奈良の地で青少年教育に取り組んでいる。

 秋田大を卒業後、教員とや教育委員会指導主事、小学校長などを経て、人口約3万人の潟上市で教育長を56歳から6年間務めた。全国の同様の施設を運営する独立行政法人「国立青少年教育振興機構」が女性所長を公募しているのを知り、「新しい土地で、新しい仕事や新たな人たちと出会えたら」と、新たな一歩を踏み出した。

 同法人が運営する青少年教育施設は28か所。81年開所の曽爾では、宿泊体験の中でハイキングや自然観察、野外炊事、ものづくり、天体観察ができ、県内や伊賀地域の学校・団体の利用が多い。

人事交流も

 佐藤所長を含むスタッフ22人には法人の職員以外に、人事交流で名張市、奈良県、大阪府などから赴任した教員や大学職員もいる。「ここでしか出会えない人同士で一緒に仕事ができるのは良い経験。それぞれの力を発揮し、チームワークを高めてほしい」と期待を込めて話す。

 「奈良はいつか必ず行く場所」と心のどこかで思い続けてきた。大学時代、式子内親王の歌や斎王のことなどを卒業論文にまとめ、奈良や京都でフィールドワークをした思い出もあり、配属が奈良だったことに縁を感じている。この夏は、秋田に住む家族を呼んで一緒に伊賀牛を食べるのを楽しみにしている。

 「私たちの仕事は、種をまいて育ちに寄り添い、諦めず期待し続けること」。教員時代から抱いてきた思いは今も変わらない。この場所を訪れた人たちが、かけがえのない「一期一会」に巡り合えるよう、人生の集大成とも言える仕事に日々全力投球している。

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