【受賞作の前で賞状を手にする飯田さん=名張市滝之原のアトリエで】

 5月下旬に東京都美術館で開かれた全国公募展「第77回創造展」で、三重県名張市桔梗が丘4の画家、飯田淳子さん(70)の「伊賀上野天神祭行列図屏風(びょうぶ)」が最優秀新人賞に輝いた。

 奈良県出身で、物心ついた時から絵を描くのが好きだった。高校、大学で芸術を学び、30代からは伊賀地域の小中学校に美術講師として勤めながら、創作に取り組んできた。

 油彩や水彩の洋画が中心だったが、2008年からは独学で水墨画を始めた。更に日本画を学ぼうと、12年には京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)に入学。在学中、水墨画を描く際に塩を使う技法に出会い、表現の幅を広げた。県展や市展などに出品し、数々の受賞を経験してきた。

 塩を使った技法は、和紙に筆で墨を塗った上から塩をふりかけ、更に水を垂らしたりする。塩は水に溶けながら墨を押し出し、独特の模様を形作る。塩の種類や量、使うタイミングなどを変えることで、墨と水だけでは生み出せない多彩な表現が可能になるという。

 受賞した屏風は、高さ約160センチ、幅約230センチの六曲一隻で、金箔や岩絵の具などで彩色した9基のだんじりの他、鬼行列などに加わる約150人の人物などが描かれている。背景は、墨と水と塩を使って描いた模様と、魔除けの意味を持つ朱色をあしらい、行列に携わる人々の思いを表現した。

 同大学の大学院に進んでから卒業制作として手掛けた作品で、構想に3年、作業に1年半を費やし、21年に完成した。今春、友人から誘われ、初めて創造展に出品することにした。

病に負けず 「描き続ける」

 飯田さんは21年秋にがんが判明し、現在も治療を続けている。抗がん剤の副作用の影響もある中、桔梗が丘市民センターで活動する水墨画クラブで月2回の指導を続け、新たな作品づくりにも励んでいる。

 今回の受賞について、飯田さんは「今までやってきたことを認めて頂けたのがうれしく、励みになる。病に負けず、これからも描き続けたい」と話した。


行列図屏風も並ぶ「bokusai展」 名張市滝之原で19日から

 「bokusai展」が7月19から21日の午前10時から午後5時まで、名張市滝之原のギャラリー「阿吽庵」で開かれる。入場無料。

 伊賀上野天神祭行列図屏風の他、飯田さんが過去に県展や市展で入賞した作品、講師を務める桔梗水墨画クラブの有志メンバーの作品など計約50点を展示する。

 問い合わせは飯田さん(090・6079・3366)まで。

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