【「名張クオリティー」を維持するのは女性の熟練技術者たちだ=名張市】

捨てず「生まれ変わらせる責任」

 本物の生花と見間違えるほど精巧に細工され、インテリアやギフト商品として人気のアートフラワー。その世界的ブランド「エミリオ・ロバ」の生産拠点が三重県名張市蔵持町芝出にある。

 株式会社エミリオ・ロバ(本社・東京都)の名張拠点には現在、熟練技術者の女性18人が、世界各国から仕入れた花材(ポリエステルやプラスチックで作られた花や茎)やガラス、陶器、樹脂などの花器(フラワーベース)を使い、1つの芸術作品に仕上げている。商品化には「名張クオリティー」と呼ばれる同社の高い選定基準をクリアする必要があり、これまでは基準から外れた約2、3割の花材や花器は廃棄されていたという。

 「SDGsの考え方の一つに『つくる責任』という項目がある。高度成長期には、大量に物を作る過程で余った材料は廃材として捨てられてしまい、多くのロスが生じ、自然破壊の原因にもなっていた。しかし、これからの生産者は、無駄なものを捨てるのではなく、再利用して新しく生まれ変わらせるという責任があると思う」と話す、同社ブランドマネジャーの奥田知久さん(63)。

 2020年にスタートしたシリーズ「SDGsコレクション」は、こうした考え方から生まれた。具体的には、水に見立てたシリコンに気泡があり傷物として捨てていた花器も、花材のデザインを変えることで本来右向きのものを左向きに使えるよう工夫したり、ロット数の関係で余った花材を捨てず、世界に1点だけのオリジナルデザインに仕立てたりするといったものだ。どれも作業効率の観点では相反するものだが、これを「コレクション」として位置付けた。

 現在までに300以上のデザインを生み出し、全国12か所の大手百貨店の自社店舗とウェブサイトで1月と7月の年2回発表している。価格は通常品より安く設定し、1か月半の販売期間中にほぼ完売するという。

 「昨今、SDGsの考え方を良く理解されているお客さまが増え、これらの商品を購入することで自ら社会貢献しているという気持ちを持たれている。毎年、心待ちされている方が多い」と奥田さん。

「世界中に笑顔を」

 同社の基本理念に「花は人を笑顔にするパワーを持っている」という言葉がある。「SDGsコレクションを通じ、より広く世界中の方に笑顔を提供したい」と話す奥田さんは「2025年の大阪万博はSDGsが最大のテーマで、弊社は昨年、多くの地元企業が参加した『名張EXPO2023』を主催し、大阪万博の公式商品の申請も予定している。万博は地域活性化の大きなビジネスチャンス。ブランドロイヤリティーを高め、名張の活性化に少しでも寄与できるよう頑張りたい」と力を込めた。

百貨店内の売り場(提供写真)
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