2030年までに達成すべき世界共通の行動目標「SDGs(持続可能な開発目標)」が国連で採択されて9年。平和と地球環境を守るため、貧困、健康と衛生、エネルギー、環境など17の目標に国や企業が取り組んでいる。三重県伊賀地域でも昨秋、SDGsをテーマに地元企業が参加した「名張EXPO2023」が開かれ、多くの来場者でにぎわった。新シリーズ「SDGsに取り組む」では、地元企業によるさまざまな推進事例を紹介する。
菊水テープ株式会社(本社・大阪府八尾市)の名張工場(名張市八幡)では100品種以上の粘着テープを生産している。その生産量の約7割を占めるのが、クラフト紙に粘着剤を塗布した包装用クラフトテープで、環境配慮型の商品だ。
一般的なクラフトテープは、粘着剤に石油由来の合成ゴムが使われているのに対し、同社は植物由来の天然ゴムを使っている。
主力商品の一つ「キクラフト♯100」は、日本有機資源協会が認定するバイオマスマークを取得。「生物由来資源(バイオマス)を活用し、品質及び安全性が関連する法規、基準、規格等に適合している環境商品」で、テープの75%以上にバイオマス材料が使用されている。
同社取締役の加藤克巳工場長(56)は「天然ゴム系粘着剤を使用した粘着テープの生産効率は決して良くない。しかし、環境に優しい商品作りは、創業以来のテーマとして取り組んでおり、2021年の初めごろから加速化させている。SDGsが叫ばれる今日、この特長を広く訴えていきたい」と話す。その一環として、展示会などではテープの表面にバイオマス材料を使用した商品や名張の方言などを印刷し、広くPRしている。
名張工場では、クラフトテープ粘着剤に使用した溶剤は回収し、9割以上を再利用している他、粘着テープ生産時に発生するガスをRTO(蓄熱燃焼式脱臭装置)の約800度の脱臭炉で脱臭、クリーン化を図るとともに、排出ガスを自燃させて炉内温度を一定に保つことにより燃料を削減。更に、併設された廃熱ボイラーで廃熱を利用し、蒸気を発生させることによりエネルギーをリサイクルするなど、環境への配慮と持続可能な生産サイクルを実現している。
また、「かぼちゃまもるテープ」は、カボチャ、スイカなどの野菜や果物の表面にテープを貼ることで温度上昇を抑え、太陽光をカットして日焼けから守ることができる。従来、日焼けした野菜などは廃棄せざるを得なかったが、鹿児島県の農家のアイデアからこのテープが生まれ、食品廃棄物と食品ロスの削減になると好評だ。
技術部の井奥朋華さん(26)は「出来るだけユーザーの意見を聞き、フレキシブルに製品開発に生かしていきたい」と話す。生産部次長の高山進吾さん(54)は「テープは最終的にはごみになるものだから、少しでも環境に良いものにしたい。究極は、テープが水に溶けて全て無くなってしまうのが理想。それを目指したい」と話している。