三重県名張市本町の榮林寺の境内に、高さ約3メートルの紅梅の古木がある。幹の大部分が朽ち、わずかな樹皮だけになっている箇所もあるが、老いてなお力強く伸ばした枝先に今年も色鮮やかな花を数多く咲かせた。柴田篤彦住職(61)は「この状態でよく毎年花を咲かせ、実をつけているなと感心する」と話す。
同寺は、今から約300年前の江戸時代中期に初瀬街道に面する現在地に移ったとされる。梅の木の正確な樹齢は不明だが、元々の幹の太さから推測すると同じころに植えられた可能性があるという。
伊勢湾台風乗り越え
市内に甚大な被害をもたらした1959年の伊勢湾台風では、名張川の氾濫で同寺も浸水するなど被害が出た。梅の木はその際に倒れたが、当時の住職や檀家がそっと起こし、支柱で補強して守ったと伝わる。
元々は現在の倍近くの高さだったが、早くから幹は空洞化していた。10年ほど前に市内が大雪に見舞われた時には、雪の重みで木の上部が折れてしまったという。
3年ほど前には、傷んだ支柱を交換する際に幹の根元付近の朽ちた部分が脱落し、現在の立ち姿になった。それでも樹皮の生きている部分を通じて水や養分を地中から吸い上げ、毎年2月下旬から多くの花を、4月には実を付ける。
柴田住職は「名付けるとしたら長寿梅か踏ん張る梅か、もしくは根性梅か。いつまでも寺を見守ってほしい」と願う。
この梅の木を次の世代に遺そうと、境内では数年前から2世の梅を育てている。
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