【ベッドルームを案内する藤井さん=伊賀市新堂で】

自ら修理し昨秋オープン

 かつて祖父母が料亭を営み、長年空き家となっていた建物を、三重県伊賀市の男性が民泊施設としてよみがえらせた。その原動力は、カナダで出会った少年から「お気に入り」として見せられた、伊賀を紹介する1本の動画。「こんな離れた場所に伊賀のファンがいるのか」と驚かされたことがきっかけだった。

幼少時の藤井さん(左)と祖父・芳雄さん(提供写真)

 自動車整備工や消防士として働いてきた伊賀市新堂の藤井秀樹さん(38)は、高校時代に短期留学して好きになったカナダに住みたいと、永住権を得るため2023年に再び渡航。ある日、教会で出会った少年が、伊賀くみひもの魅力を紹介する動画を見せてきた。「地元の魅力を再発見した」藤井さんは永住を断念して帰国し、伊賀を世界にアピールしようと、インバウンド顧客向けの宿泊施設を作ろうと決意した。

 元料亭の建物はJR新堂駅前にあり、「春日亭」の屋号で40年ほど前まで使われていた。工具の使い方に慣れていた藤井さんは約3か月をかけ、ボイラー修理から床の張り替えまでほぼ一人でこなし、昨年11月に「民泊YADOOR(やどあ)」としてオープンした。

 2階建ての施設には4つの部屋を備え、鉄製急須でお茶を楽しむ畳スペースやキングサイズのベッドを置いた部屋もある。また、宿泊客が食材を持ち込んで調理することもできる。今年に入ってからは、東京からの家族連れや宿泊サイトを通じて申し込んだ中国からの旅行者など、少しずつ利用者が増えてきているそうだ。

伊賀を発信

 国や地域によって文化や風習が異なるため、それぞれに適した滞在環境を心掛けているという藤井さんは「伊賀忍者や伊賀くみひも、松尾芭蕉など、伝統的な文化や歴史を世界に発信し、観光客をもっと受け入れたい。地元での観光客増や異文化交流のきっかけになればうれしい」と抱負を語った。

 問い合わせは藤井さん(080・9985・0004)まで。

2024年2月10日付861号2面から

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