口伝の技を受け継ごう―。三重県伊賀市瀧の住民有志が5年ほど前から、地元にある熊野三所神社の祭りに合わせてしめ縄を架け替えるため、地域の長老に作り方を学び、力を合わせて長さ3メートル余りのしめ縄を作っている。
元々は祭りの準備・進行を采配する頭屋が毎年しめ縄を作ってきたが、手順などを記した資料は無く、担い手の高齢化もあり、「しめ縄作り同好会」が発足。会長の浦山正夫さん(73)を中心に毎年参加者を募り、秋祭りの前週に10人ほどが集まって作業している。
「やってみればわかる」
奉納するしめ縄に使用するのは、地元で栽培された酒米のわらで、脱穀後に陰干しして乾燥させたものを使う。発足当初は、わらをなって縄状にする作業も慣れない人が多い中、20代のころから同神社のしめ縄を作ってきた杉井誠一さん(91)が実践しながら一つひとつ指南している。
「基本の縄をなう作業は頭で考えても難しいが、やってみればわかる。わらを使っていろんなものが作れる発見もある」と話す浦山さん。3年前からは、同じ上津地区にある比々岐神社(同市北山)拝殿のしめ縄も奉納しており、作業の日に合わせ、八幡講の人たちも一緒にしめ縄を作りに来ているそうだ。
作業を見守り、時には手本を見せて助け舟も出していた杉井さんは「誰でも最初はうまくいかないものだが、皆だんだん慣れてきた。今年もよくできている」と穏やかな表情で語った。
2023年11月25日付856号2、3面から
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