菓子製造販売業 大屋戸重雄さん(76)
「年齢は若くはならないし体力も要るが、かたやきは、なくしてはいけない商品」。夏場は室温が40度近くにもなる厨房で黙々と鉄板に向かい、1枚1枚丁寧に仕上げていく。
中学校を卒業後、松阪市などにあった和菓子店で数年間修業し、27、8歳のころ、父の営む和菓子の製造卸「大屋戸製菓」に従事した。当時の店舗は名張市新町にあり、1978年に現在地へ移転した。
かたやきを中心に取り扱うようになったのは30年ほど前からで、現在は通常サイズの「かたやき」に加え、「あん入りかたやき」、小さい「かたやき小丸」を製造販売する。店頭販売の他、地元のスーパーや観光施設に卸したり、県外へも販売したりするなど、妻美葉さん(64)と二人三脚の忙しい毎日を送っている。
大屋戸さんが作るかたやきの材料は、小麦粉、砂糖、ごま、水など。1日に焼き上げるのは平均600枚ほどで、季節によって水分量を調節したり、練る回数や焼き加減を変えたりし、「同じように作っても日によって焼き上がりが違う」のだそうだ。
「忍者の携帯食」とも言われるかたやきは、水分が少なく日持ちすることもあり、贈答用や海外への土産用に買っていく人が増えているそう。大屋戸さんは小学校の食育の一環で実演や講話を依頼されたり、毎年6月4日の「むし歯予防デー」に合わせて多くの発注が入ったりすることもあるという。
たまの休日には好きなアーティストのコンサートにも出掛けるが、かたやきのことはいつも考えている。「『おいしい』と言ってまた買いに来てくれる人がいる限り、それを張り合いに日々鉄板に向かっている。これからも皆さんに喜んでもらえたら」と笑顔で語った。
2023年9月23日付852号10面から
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