【休息所に設置したかかしと杉玉クラブのメンバー=伊賀市高尾で】

 「ちょっといっぷくしゃーへんか」。三重県伊賀市高尾の伊賀コリドールロード沿いに、大人や子どもの集団が何やら楽しげにくつろいでいる。よく見ると、11体のかかしだ。

 かかしは70、80代の地元住民8人でつくる「杉玉クラブ」の手作り。木組を土台に、ペットボトルなどで手足を作り、針金を通して関節を動かせるようにしている。

 気泡緩衝材を胴体に巻いた上に、各家庭から持ち寄った古着を着せ、椅子や使わなくなった孫の三輪車などに乗せている。農作業の合間に、円卓を囲んで和気あいあいと語り合う場面が表現されている。

 同クラブは、酒蔵などの軒先に吊るされる杉玉を趣味で作ろうと、12年ほど前に発足。近くで宿を営む年岡夫美男さん(73)の指導で活動を続けてきたが、杉の伐採作業が高齢化するメンバーにとっては厳しくなり、3年ほど前に杉玉作りは断念した。

 代わりに手工芸などの活動に取り組む中、「畑の獣害対策にもなる『かかし』を作ろう」という声が上がり、この春、4体を制作。メンバーの北浦貴美子さん(79)が畑の一角を提供し、瀧本義久さん(84)が建てたかかし用の屋根付き休息所に設置した。

 メンバーは「畑を荒らす猿も、かかしが怖くて近づけないだろう」と期待したが、猿は恐れることなく、設置翌日には畑に侵入したという。一方、「バーベキューしとるんか」と勘違いしたり、かかしに道を尋ねる通行人が現れたりと、人間の方が驚いている様子だという。

 「子どものかかしも作ろう」という声が上がり、かかしの数はどんどん増えた。設置場所から北約500メートルには、SNSなどで人気のソニック像があり、年岡さんは「ソニックまで来た人は、少し足を延ばしてかかしも見て行って」と呼び掛けている。

2023年8月26日付850号3面から

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