【塼仏を手にする坂東住職=名張市夏見で】

 三重県名張市夏見の国史跡・夏見廃寺の近くにある真言律宗「福典寺」で、天武天皇をしのぶ法要「天武忌」が9月9日午前10時から、初めて営まれる。坂東瑞祐住職(56)が、広く参列を呼び掛けている。

 夏見廃寺は、天武天皇皇女で初代斎王の大来皇女(おおくのひめみこ)が父の菩提を弔うために発願し、725(神亀2)年に完成後、10世紀末頃に焼失した「昌福寺」にあたる可能性が高いとされている。完成したとされる年から1300年の節目となる2025年に向け、福典寺が大来皇女の遺志を継ぐ法要を天武天皇命日の9月9日に営んでいくことにした。

 また節目に向け、夏見廃寺出土塼仏(せんぶつ)と同じ形の塼仏を福典寺本堂の欄間の一面に設置する取り組みを始める。塼仏は粘土で型を抜き焼いて作った板状の仏像で、夏見廃寺展示館でも展示がある。

 天武忌の当日は、奈良時代の衣装を身に着けた人たちによる参列や雅楽演奏、秘仏の御開帳などがある。大来皇女の衣装を身に着けた女性が登場し、願いを読み上げる場面も盛り込まれる予定だ。

 坂東住職は「壬申の乱以来ゆかりのある名張に、天武天皇を供養するための寺が建てられたことは意味のある事。名前や形、場所が変わっても、供養をしてきた昔の人々の気持ちを大事に引き継いでいくべきだと思う」と話した。

 同寺は、法要で奈良時代の衣装を身に着ける小学生以上の参列者を8月31日まで募集している。先着10人は無料で、11人目以降は有料(衣装レンタル代)で受け付ける。

 申し込み、問い合わせは同寺(0595・63・1392)まで。

2023年8月12日付849号22面から

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