歴史ある酒蔵だからこそ生まれた米麹スイーツを――。アルコール類が苦手な人や子どもも口にでき、酒蔵に足を運ぶ人を増やすきっかけになればと、1793年創業の澤佐酒造合名会社(三重県名張市夏見)が、吟醸酒造りと同じ麹を使ったプリン「ワンカップリン」(税込み486円)を開発し、酒蔵併設の店舗で販売している。
2年ほど前、麹造りの技術向上を目指す15代目の澤滋久代表(57)が、麹を使ったスイーツの開発を提案。自然で良質な甘みが出せるよう、ブドウ糖を生成する酵素力の強い麹菌を使うことにし、三重県産の酒米「山田錦」を50%まで精米するなど、昨秋から試作を重ねてきた。
カップ酒用のガラス容器にプリンを150グラム入れ、濃厚な麹甘酒をトッピングし、自家製の黒蜜を沈めた。味はプレーンの他、麹クリームコーヒー(同594円)、季節のフルーツ(同、数量限定)などがある。市販の一般的なプリンより量は多めだが、3層構造と砂糖不使用の自然な甘みで「最後まで飽きずに食べてもらえる」という。
今年3月の発売に合わせてオープンした「酒蔵カフェ 名張麹工房」(10席)では、プリンや造りたての生の吟醸麹甘酒などを提供。発売から約2か月、店頭には園児や学生、妊娠中の女性らも足を運ぶといい、「麹独特のくせが苦手だった人にも好評で、想像以上に幅広い年齢層の方が買いに来てくれる」と関係者も驚いている。
カフェには酒粕ラスクや、パンに塗って焼くのがおすすめという「ミルク麹クリーム」なども並び、仕込みの時期には窓越しに麹造りの作業風景も眺められる。澤代表は「酒蔵にしかできないこと、酒蔵だからこそできることをこれからも模索していきたい」と語った。
カフェの営業は午前10時から午後6時まで。月、火曜定休。インスタグラム(@383koji_2023)でも情報を発信している。
問い合わせは同カフェ(0595・64・0077)へ。
2023年6月10日付845号14面から