JAいがふるさと(本店・三重県伊賀市平野西町)組合員の30、40代中心の営農家で組織する「青年部」では、新しい挑戦として「農福連携」に力を入れている。
農福連携は、障害のある人が農業分野で活躍することで、自信や生きがいを持って社会参画を実践していく取り組み。受け入れる農家側は新たな担い手としての労働力の確保につながっている。
青年部長の堀田勝俊さん(36)は現在、同市下神戸で米作農業を営む株式会社ヒラキファームの野菜部門として4年前に独立したベジタブルラボ株式会社で働いている。発足当初、近くの福祉事業所から「障害者の就労支援で農作業を手伝いたい」という声があり、そのことが農福連携を始めるきっかけになったという。
その後、複数の福祉事業所から軽度の知的、身体的障害のある人を受け入れ、キャベツ、ブロッコリー、トマトなどの収穫の繁忙期などに1回当たり5、6人で就労支援してもらっており、労働の対価を支払っている。
青年部の一人、同市石川の北川敏匡さん(39)は米の他に、トマトとイチゴを栽培する営農家で、今までに一度だけ障害のある人を採用した経験がある。「当時は受け入れる準備や作業分担などに不安もあったが、今では参考になるマニュアルもあるのでハードルが低くなっている」と北川さん。
このマニュアルを作ったのが堀田さんだ。トマトの芽かき、誘引、葉かきやブロッコリーの選果、出荷、更にイチゴのランナー取り、パック詰めなどのやり方を10分間の動画とマニュアルにしている。「福祉事業所の指導員の方に農業のことや作業の手順を知ってもらうためにまとめたもの。作業者に指示しやすくなったと好評」と話す。
現在33人が所属している青年部の中で、農福連携を実践しているのはまだ5、6人に過ぎないという。名張市美旗中村の高波泰之さん(43)は16万平方メートルの稲作農家だが、「稲作は機械化が進んでおり障害のある人に担当して頂く仕事は少ないが、今後検討していきたい」と話す。
堀田さんは「障害のある人たちが作業をスムーズに進めていくうちに、やる気と自信に満ちた表情に変わっていく。また農作業を通して地域の人と交流することを楽しみにしている人もいる。今では大きな戦力として定着している」と喜ぶ。
JAいがふるさと総合企画部の東祐大さんは「農業労働力の確保についてはJAいがふるさと青年部として数年前から取り組んでいるテーマだが、外国人労働者や学校を卒業した若い人に就労してもらうのは難しいのが現状。農福連携はその手立ての一つとして、今後とも青年部を中心に情報共有しながら実施例を広げていければ」と話している。