11月中旬、三重県名張市桔梗が丘2番町の集会所「いきいきサロン」に集まった高齢者30人の前で、着物姿でジェスチャーたっぷりに演じるのは、アマチュア落語家として活動する同市百合が丘東3の米住正幸さん(64)。開口一番、「素人ですので、うまくいかないこともありますが」と、1時間半にわたり創作落語や声帯模写などで参加者の笑いを誘っていた。
25歳ごろまで、学校や職場で物まね芸を披露しては人を笑わせるのが好きだった。定年間際の59歳の時、母親の清子さんが入所した介護施設の敬老会で、ボランティアが太鼓やコーラスで利用者を楽しませているのを見て、「自分も何か演芸ができないか」と思ったのが、落語を始めたきっかけだった。
インターネットで動画を見ながら、声の出し方や所作を独学で猛勉強。百合が丘住宅地の周遊コースを2周歩きながら、何度もネタを繰り返したという。また、社会人落語が盛んだという大阪府池田市へアマチュア落語を、大阪市内の寄席「天満天神繁昌亭」へはプロの落語を聞きに行き、アマとプロの話芸の違いや自分にできるネタを研究した。
芸名の「八十八家(やそや)米住」は、30代から始めた四国八十八ヵ所の霊場巡りから引用した。コロナ禍前には、名張市内の高齢者サロンなどに年5、6回招かれて演じ、芸を磨いてきた。
この日のサロンでは「オレオレ詐欺」「子どもの見守り活動」をテーマにした防犯落語2題の他、創作落語「宿題」、古典落語「平林」を演じた後、「懐メロ歌合戦」と題して「憧れのハワイ航路」「お富さん」など9曲の歌まねを披露。その間、政治家の田中角栄や石破茂、野球評論家の小西得郎、俳優の渥美清、藤山寛美など著名人13人の声帯模写をテンポよく織り交ぜて熱演し、会場は拍手と笑いに包まれた。
創作落語増やしたい
米住さんは「いろんなバージョンを組み合わせながら、皆さんに喜んで頂くのが何よりもうれしいし、やりがいがある。10月から始めた新しい仕事や毎朝の新聞配達などで今は稽古の時間は無いが、時間に余裕ができれば創作落語を増やしたい」と話した。
2022年12月24日付833号2、3面から