【勝手神社の境内を案内する西口宮司=伊賀市山畑で】

「神事踊」がユネスコ無形文化遺産に

 ユネスコ無形文化遺産に登録された「勝手神社の神事踊」は、三重県伊賀市山畑の勝手神社で毎年10月の例祭に奉納されている行事だ。神事踊の喜ばしいニュースがクローズアップされる中、同神社では、新たな年を迎える準備が進んでいる。西口昌寛宮司(60)に来る年への思いを尋ねた。

人と人のつながり深める場

 勧請年月日は不詳だが、奈良県吉野町の勝手神社から分祀されたと伝わり、明治末期には山畑地区の15社を合祀。主祭神「正哉吾勝勝速日天之忍穂耳命(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)」の名にある「勝勝」の字面から、近年では勝ち運向上や必勝の祈願にも訪れる参拝者もいるという。

 南側の鳥居をくぐり、境内へ進むと石の太鼓橋があり、渡る池にはゆったりと泳ぐ鯉の姿。神事踊とともに、例祭日前夜の宵宮で奉納される角力では、境内にある土俵を毎年、角力保存会や氏子青年会らが整備し、行司や呼出など運営も担っている。

「当たり前」が特別

 西口宮司は日置神社(伊賀市下柘植)との兼務で2020年2月から宮司を務める。雅楽を奏でる「伶人」、氏子青年会、愛田かっこ踊り保存会の一員として神社との関わりがあり、先代宮司の死去に伴い当時の総代から推薦を受け、53歳で神職に就いた。

 神社は、人と人とがつながる場所でもあるが、長引く新型コロナの影響で、神社や人々を取り巻くあらゆる「当たり前」が当たり前ではなくなった。「祭りや会合を通じ、神社に関わる方々が顔やひざを突き合わせ、信頼関係を強めてきた。コロナ禍で皆の心の距離が離れ、それに慣れてしまうことを危惧している」。

 そう話す西口宮司は「このような状況が、当たり前が何より特別だと教えてくれた。来年は干支の卯のように勢い良く跳び上がり、さまざまな事態が好転し飛躍する年になってほしい」と願いを込めた。

 同神社では大みそか、氏子青年会が境内でかがり火をたき、温かい飲み物を振る舞う。元日午前0時には20発ほどの花火も打ち上げられる予定。

2022年12月24日付833号10面から

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