三重県名張市百合が丘東の丸岡秀通さん(78)方の庭には、ストーブの燃料に使用するまきが、大きな蜂の巣のように円柱状に積み上がっている。「スイス積み」などと呼ばれるヨーロッパの山岳地帯に囲まれた国では一般的な積み方で、まき割りから組み立てまで4、5か月ほどかけて作った。
10年ほど前、居間の中央に取り付けたストーブ。燃料のまきはクヌギなどの生木を風に当てて乾燥させる必要があり、今までは庭に設置した棚に平積みにして保管していた。しかし、通常の積み方では乾燥に2年ほどかかるそうで、使える量が足りず、エアコンで代用しながら寒い冬を過ごしたこともあった。
スイス積みは、動画投稿サイト「ユーチューブ」で存在を知り、その特徴的な形に引かれた。積み上げたまきは、全方位から風が均等に当たることから乾燥も早いそうで、期待も高まったという。
今年3月、偶然にも落ち葉対策で伐採された木を名張市内の公園で発見。管理する市の許可を得て、軽ワゴン車約7杯分を自宅に運び込んだ。空いた時間を見つけては木をチェーンソーで長さ約40センチにそろえ、おのでまきを割る作業を続けていたが、途中からは体への負担も考え、まき割り機も駆使した。
積み上げの工程は動画を参考に、妻の眞由美さんと分担して作業した。ビニールシートを敷き、円状に並べたレンガの土台に崩れないよう慎重に並べていった。安定させるため、円の内側に荷重がかかるように少し傾けて積むのがコツだという。
一冬でほぼ消費
高さは約1・5メートル、直径は約2メートルで、ノルウェー国旗や「スイス積み」と書いた木のプレートをあしらい、風通しを良くするため、縦横約30センチの穴を2か所に開けている。ストーブの設置工事をした業者も、年1回のメンテナンスに訪れた際「こんな積み方は初めて見た」と目を丸くしていたそう。
既に一部は乾燥し始め、今冬には使える予定だ。ストーブに火をつける12月から3月末までの4か月間に消費するまきは1日50本ほどで、時間をかけて積み上げても一冬でほとんどなくなってしまうそうだ。
丸岡さんは「完成した時は達成感があった。今年の冬も温かく過ごせそう」とほほ笑み、「気力が残っていれば来年も」と意欲をのぞかせた。
2022年11月5日付831号3面から