三重県名張市の名張商工会議所が創立60周年を迎えた2018年に創設した「名張商工会議所長寿企業表彰制度」。表彰された43社をより多くの人に知ってもらおうと、追加取材とデータをデジタル化して一つのホームページにまとめたサイトが開設された。表彰は、会員として10年以上経過した企業で、市内に本店、本社を有し、100年以上存続し経営する企業が対象。YOUでも毎週1社ずつ、創業年代順に企業を紹介していく。名張の長寿企業サイト
創業1912 明治45年
名張市箕曲中村76
電話 0595-63-0548
代表者 岩見 諭
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■ 取扱商品・サービス
日本瓦(一般住宅瓦・神社仏閣の特殊瓦・鬼瓦(手作り品))です。製造から施工までの責任一貫システム。
また、屋根に関することならなんでもお客様と相談しながら工事をさせて頂いています。
会社の正面に立つ岩見社長
職人の研修用に復元した法隆寺の鬼瓦と竹森信也工場長
■ 事業の沿革
明治45年(1912年)創業で現在108年目を迎えます。初代、庄吉は箕曲中村の奥家様の瓦屋で修行をし、現在の箕曲中村76番地に独立し創業しました。
もともと名張は粘土が豊富で瓦製造が盛んでありました。最盛期では15軒以上の瓦屋があったと聞いています。
2代目の弥蔵の頃は高度経済成長の時期で、名張市の家の建て替えも盛んになりました。それに伴い、それまでダルマ窯(※外見がダルマの座った形に似ていることからこう呼ばれる窯)で瓦を製造しておりましたが、ガス窯に転換し、工場の拡張や設備機械の増幅により手作業から機械作業になり、大量の瓦を製造することが可能になりました。また、木造作りが大半で和瓦を使用した家がポピュラーだった建築様式も変わり、在来工法も少なくなり和瓦を使用することが激減しましたが、特徴である「製造から施工まで責任一貫システム」で経営しています。
一枚の瓦を一人で作り上げるまでには5年を要すると言われている瓦職人。忍耐力を必要とするため長続きしない若者が増える中、伊賀瓦の技術が消えてしまわないように後継者の育成にも力を入れております。
多くの「1級技能士」認定証が社内に飾られている
■ 経営理念・特色
【温故知新】を経営理念にしております。瓦は1300年の歴史があり、文化財の瓦は1000年前の瓦でもまだ残っています。先人たちが残した心と技術を学び、日々研鑽を重ねながら、現在のニーズに合わせた屋根工事にも適した製造や施工を目指したいと考えます。
■ 日々研鑽を重ね 文化財の瓦の修復も
Q これまでの会社のエポックメーキングは何ですか?
A 瓦の焼き上げ方法の変遷ですね。昔は全て手作業で、地元名張の粘土質の土を固め、「ダルマ窯」に薪を燃やして焼き上げていました。しかし、焼成温度が低いと、冬になると凍てて割れる原因になります。特に伊賀は寒い地域なので、均一に焼けた瓦が必要でした。その後、ダルマ窯から重油やガスを使った機械窯に変わったことで、焼け具合を均一に、しかも大量に焼くことが可能になりました。
Q 機械窯になったのは、2代目の弥蔵さんのころですね?
A 昭和30年代から50年代は建築ブームで、日本の家屋が瓦葺きに建て替えられた時期です。瓦の需要は急拡大し、会社も潤いました。しかしその後、和風建築は少なくなり、さらに阪神淡路大震災で瓦葺きの家の倒壊がクローズアップされ、瓦離れに拍車がかかりました。家の倒壊は、柱や基礎にも要因があったのですが……。
機械窯で焼かれた瓦が流れる生産工程
Q 現在は一般住宅の他に、神社仏閣向けにも力を入れていますね。
A 日本瓦を使う分野として、神社仏閣の重要性は年々増しており、関西、中部圏の神社仏閣の他、時には徳島県などの遠方まで泊りがけで職人を派遣しています。
今後はさらに製造技術と施工実績を積み、県や国の文化財の復元工事にも関わっていきたいと考えています。ここにあるのは職人が描いた法隆寺の鬼瓦のデザインですが、これを基に工場や屋根職人が研修しており、いずれ復元の仕事に自分も参画したいという夢を持っています。
Q 事業の継承のために最も必要なことは?
A 若い人材の確保ですね。職人が1人前になるまでには10年ほどかかります。国家試験である「1級技能士」取得を目標に、長い目で育てていく方針です。
Q 会社の今後について教えてください。
A 現在、淡路瓦(兵庫県)や三州瓦(愛知県)などの瓦の産地ですら、瓦の製造者がどんどん減っているのが現状です。背景には職人の高齢化や担い手不足の問題があります。
こうしたことから今後、瓦の作り手が重宝される時代になってくると思います。そうでないと、国の宝である文化財を守れなくなりますから。文化財の保存に求められる技術レベルは格段に高いものがあります。瓦の製造から施工まで一貫して行う同社としては、今後とも高い志と覚悟を持ち日々研鑽していきたいと思います。