三重県伊賀市の神社の境内で保護された子猫は、他の猫のようには歩くことができなかった。動かない後ろ脚を引きずり、前脚だけで移動して暮らしている。動物保護団体の代表が市内の自宅で預かっているが、5か月間経っても里親が決まっていない。〈YouTubeで動画(https://youtu.be/6gzFwUqrWQE)〉
保護当時をよく知る人によると、今年4月、犬の散歩をしていた同市の女性が、自宅近くの神社の石段で、生後3週間から1か月程度とみられる猫が鳴いているのを見つけた。女性は、連れていた犬を自宅に戻してから再び神社を訪れた。
10分にも満たない時間だったが、猫の姿は元の場所になく、女性が付近を捜すと、段を上った先の境内で横たわっていた。けがをしており、顔や脚から出血があった。その時、上空ではカラスの鳴き声が響いていたという。
カラスに襲われた?
「カラスにさらわれて落とされ、死んでしまったかもしれない」。女性から連絡を受けた保護団体のメンバーが駆け付けて確認すると、猫は息をしていた。市内の動物病院に運んで手当てをしてもらうと、くちばしで突かれたような傷口が確認でき、左前脚の骨折や後ろ股関節の変形も見つかったが、命はつなぎとめることができた。
助けられた猫は体重約300グラム。雑種の雌で、「アルプスの少女ハイジ」のように元気で活発に育つように「ハイジ」と名付けられた。その日のうちに、動物保護団体「ねこのしっぽ」の代表で、30匹弱の猫を世話する水本美恵子さん(70)が受け入れることが決まった。
水本さんは寝たきりのハイジに接する中、下半身のまひに気付いた。脊椎(せきつい)の損傷があるとみられ、両後ろ脚ともピンと伸びたまま、自分の意思では動かすことができないようだった。2か月ほどでけがからは回復したが、4本の脚で自立したり、歩いたりすることはできなかった。
これまで目や耳の不自由な猫、脳に障害のある猫を世話した経験がある水本さんだが、下半身まひの猫は初めてだった。ハイジは排泄(はいせつ)のコントロールに難があり、おむつ交換が常に必要だ。自分の排泄物で臀部(でんぶ)などが汚れるため皮膚炎や膀胱炎(ぼうこうえん)になりやすく、水谷さんは清潔保持のため1日3回の洗浄を続けている。
ハイジは9月中旬現在、推定生後約6か月で、体重は約1・6キロに成長している。「ハンディのある猫の里親は、なかなか決まらないことが多い」と話す水本さん。「ハイジは誰にでも懐く性格で、とても元気。この子のため、きっちりと世話をして頂ける方に巡り会うことができたら」と願っている。
ハイジに関する問い合わせは保護団体「伊賀の猫好きおばさんSAI(サイ)」の藤井さん(090・5862・8446)、または石崎さん(090・2135・5311)へ。
2022年9月24日付828号22、23面から