三重県の伊賀市議会は6月定例会最終日の27日、一般会計補正予算案に盛り込まれていた国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を全額活用し、市への寄贈作品をスマートフォンやパソコンで閲覧できるようにする仮想美術館の構築委託料など3049万円を削除する修正議案を賛成多数で可決した。
修正理由について、森中秀哲市議(草の根・無所属フォーラム)は、21日の予算常任委員会の質疑について触れ、「市内の文化イベントが感染防止対策に注意しながら開催している現状を考えれば、寄贈作品を見てもらうという目的は巨額の費用をかけて構築しなくても他の方法で実現可能。費用対効果も不明確で、作品の保管状況を危惧する声も多いという点が明らかになった」と説明。物価高などで市民が皆、大変苦しい状況の中だとし、「仮想美術館にコロナ交付金を使う優先順位には疑問だ」と指摘した。
市文化振興課によると、年間の運用費500万円を含め、構築費を含めた5年間の経費は総額約5700万円。補正予算案の議決後、来年3月までの完成を目指すと説明していた。
岡本栄市長は閉会後、市議会が仮想美術館の経費を削除したことに対し、記者会見を要望。発言の要旨は次の通り。
「予算委でさしたる反対もなく、今日になって議員発議があり、バーチャル美術館の部分を削除するということになって可決された。じゃあ、予算委って何なんですかという話。今回こうして新型コロナに関する国のお金でやらせて頂けるという大変いいチャンスだと思うが、文化そのものを、高いとか安いとか、ダイコンやニンジンを買うような話ではないから、おそらくそれは間違った認識。そうしたことが将来や未来に対する投資だから、それは金銭にかえられるものではない。手続き的にも予算委を全くひっくり返して削除するということは、きわめて稀なケースだと思う。議会制度に危惧を抱かざるを得ない」