【自作の「唐組台」で帯締めを作る松山さん=名張市桔梗が丘3番町で】

技術究め 自分高めたい

 三重県名張市桔梗が丘3番町の組みひも作家で、日本工芸会正会員の松山好成さん(76)がこのほど、日本の伝統を継承しながら未来につながるものづくりに取り組む個人と団体を表彰する「第4回三井ゴールデン匠賞」を受賞した。

 三井グループ各社でつくる三井広報委員会が主催。今回は九谷焼や江戸木目込人形など、3人と2団体が選ばれた。松山さんは伊賀くみひもの分野で、技術的に難しく廃れつつあるといわれる「唐組台」を使い、1日6から8時間、4か月以上も要して制作した草木染の帯締め「くみひも(唐組)万華鏡」(長さ155センチ、幅1・9センチ)を出品。熟練の技が評価された。

組み上げた帯締め

 25歳の時、父が経営する家業の組みひも会社に入り、勤務していた会社を辞めた。当時は着物の需要も多くあり、帯締めの販売は好調だったという。

 41歳の時、父が他界。「それまで商売のことばかり考えてきたが、これからは作家として顧客の信用を高められる活動に専念しよう」と決意。47歳で「東海伝統工芸展」に初入選したのを機に、公募展に積極的に挑戦し入選、入賞を果たしてきた。

 50歳で「日本伝統工芸展」「日本伝統工芸染織展」に相次いで初入選。以降、それぞれ20回もの入選を重ねている。同じ年には「伊賀くみひも伝統工芸士」に認定され、更に70歳で、業界初の「三重県文化賞文化功労賞」を受賞した。

 挑戦を続ける理由について「技術を究めることで自分を高めたいだけ」と話す。組みひもは一般的に「角台」「丸台」の他、重り(玉)で糸を引っ張りヘラで打ち込んで組み上げる「高台」や「綾竹台」などを使うが、「唐組台」では重りは使わず、手だけで糸を引っ張り、締めながら幅をそろえ表面を平らに組み上げていく。

 その技術は至難と言われ、継承者は国内にほとんどいないという。使う糸の本数が少ないため、より細かい模様を仕上げるには糸が切れる寸前まで引っ張ることが必要で、手先の疲労とともに技術的にはほぼ限界に来ているそうだ。

 松山さんは唐組台そのものも手作りし、椅子に座り楽に作業ができるよう高さや強度を工夫した。色も化学染料を使わず、草木染で自ら染め上げている。「伊賀くみひもの組合員は、全盛期には100軒以上あったが、今では20軒ほどに減少した。後継者不足が最大の課題」と話す。自身の後継については娘に託すつもりで、「技術面は全て教えておきたい」と話す。

 大病を何度も乗り越えてきた松山さんは体力維持のために毎日、自宅の周辺を約1時間、5キロほどウォーキングしている。「技術にゴールは無い。これからの目標は、全ての面で納得のできる大作を作ること」と抱負を語った。

2022年3月26日付816号11面から

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